研究課題
岡山労災病院および北海道中央労災病院の悪性中皮腫患者(MM)11例およびびまん性胸膜肥厚患者(DP)13例の末梢血を得た。バイク便および鉄路または空路を経由し、川崎医科大学衛生学まで血液試料を運搬し、翌日、試料調製を行った。運搬には庫内の温度を22度に保つため恒温パックおよび輸送コンテナを用い、温度自動記録装置を庫内に置き、輸送中の庫内温度を一定に保った。血漿を分離した後、末梢血単核球(PBMC)を調製し、CD4+CD8-Tヘルパー細胞(Th)、CD4-CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)、CD56+ナチュラルキラー細胞(NK)、単球の各種細胞膜上分子の発現量および血漿中サイトカイン・ケモカイン濃度を蛍光標識抗体とフローサイトメーターおよびluminexシステムを用いて測定した。また、PBMCからフローサイトメーターを用いて各細胞集団をソートし、一部を培養し、凍結保存した。MMではTh上の制御性T細胞(Treg)マーカーの一つであるGITR発現量はDPよりも有意に高い値であった。またMMは有意に高いCD69%を示した。またCTLについては、MMではCXCR3%が有意に高く、CD69%もThと同様に高値であった。29種類の血漿中サイトカイン・ケモカイン濃度を調べたが、いずれもMM・DP群間で有意な差は見られなかった。以上の結果は、MMとDPにおいてTreg機能が異なっておりMMにおいて亢進していることを示している。石綿曝露環境におけるMMとDPの病態へのTreg機能の差異の関わりが示唆される。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は岡山労災病院を中心とした施設の協力のもと予定通り、悪性中皮腫患者および石綿曝露良性疾患としてびまん性胸膜肥厚患者の末梢血試料の収集と解析を進めることができている。また細胞表面分子発現量と血漿中サイトカイン・ケモカイン濃度の中間解析も行うことができている。従って、当初の計画にそって、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
平成29年度は、症例数の更なる蓄積、および凍結保存細胞試料を用いたmRNA量の解析をすすめ、更に両群間の免疫動態の把握、およびDPを含む石綿曝露関連良性疾患とMMとを区別するスコア式の抽出を進める。それらより、悪性中皮腫と石綿曝露良性疾患の免疫動態に関する科学的基盤情報の取得、および悪性中皮腫の免疫学的スクリーニングデバイスとしてのスコア式の確立をできるよう万全を期する。
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