研究課題/領域番号 |
16H05266
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
馬場園 明 九州大学, 医学研究院, 教授 (90228685)
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研究分担者 |
西 巧 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 主任技師 (20760739)
松尾 龍 九州大学, 医学研究院, 助教 (60744589)
鴨打 正浩 九州大学, 医学研究院, 教授 (80346783)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療管理学 / 電子レセプト / 市販後薬剤疫学研究 |
研究実績の概要 |
福岡県後期高齢者医療広域連合に請求された2012年4月から2015年3月のレセプトデータデータベースを用いた。本研究ではcase-crossover designを採用した。この手法は、危険期間と対照期間は半減期や調剤された後、服薬されるまでの可能性のある期間を考慮して設定するものである。そして、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を対象とし、かつ請求データを用いた先行研究の方法を踏襲することとした。したがって、危険期間は大腿部骨折による入院発生日(以降, 基準期間)から29日前、対照期間は2つ設定し、一つは基準期間60日前から89日前、もう一つは基準期間120日前から149日前とした。調査対象者13,769名のうち、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に曝露したことのある者は1,693名(12.3%)であった。大腿部骨折患者のうち女性の割合が大きく80%以上であった。調査対象者における併存疾患の内訳をみると、不眠症が最も多く51.4%、続いて骨粗鬆症が49.9%と多かった。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬曝露の大腿部骨折への影響は調整済み OR 1.45[95%CI 1.22-1.71]で統計学的有意に増加リスクとの関連が認められた。さらに、75歳以上は加齢とともに副作用によるリスク増加への影響が大きくなることが認められた。併存疾患では、不眠症集団においても大腿部骨折への影響が認められ、「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の影響ではなく、不眠症になったためにリスクが上がったのでは」という疑問を否定し、当該睡眠薬のリスク増への影響を示唆した。また、認知症において相対的に大きな影響が認められた。当該睡眠薬が認知機能の低下という副作用も報告されていることに鑑みれば、ふらつきだけでなくこのような副作用による相乗効果により、リスクを増加させていると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は、福岡県の後期高齢者医療制度の被保険者を対象として電子レセプトを追跡し、市販後の長期的な薬剤関連のアウトカムの検討を行うものである。すでに2012年4月から、2015年3月までのDPC、医科入院、医科外来、調剤レセプトのデータの入力が完了している。薬剤による有害事象としては、現在、睡眠薬の大腿骨骨折の影響の他、睡眠薬の重複処方による有害事象、抗うつ剤による有害事象、糖尿病薬による有害事象などの研究を学会発表しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、福岡県の後期高齢者医療制度の被保険者の電子レセプトを追跡し、2018年3月までのDPC、医科入院、医科外来、調剤レセプトのデータを入力する。高齢者への投与の危険性が報告されているものの広く使用されている糖尿病薬、降圧剤、非ベンゾジアゼピン系薬物、三環系抗鬱薬を投与されている高齢者を曝露群とし、対照群は曝露群とプロペンシティ・スコア・マッチングで選択し、交絡をコントロールする。プロペンシティ・スコア・マッチングの要因としては、性、年齢、在住2次医療圏、併存疾患項目等の対象の背景要因から、当該薬物を処方される確率、すなわちプロペンシティ・スコアを算出し、その値を用いて、1対1対1でのマッチングを行う。また、併存疾患は、虚血性心疾患、脳血管疾患、うっ血性心不全、膠原病、認知症、肝疾患、糖尿病、消化性潰瘍、末梢血管疾患、慢性肺疾患、悪性腫瘍であり、研究開始前の平成24年度のレセプトから同定する。なお、疑い病名は除外する。アウトカムの入院の発生率を曝露群、第1対照群、第2対照群で比較する。リスクの指標は相対危険度とする。さらに、これらの傷病の入院医療費・日数を曝露群、第1対照群、第2対照群で比較する。統計解析は一元配置分散分析を用いる。そして、アウトカムの入院の発生率比較についてはポアソン回帰モデルを用いる。交絡要因としては、性、年齢、居住2次医療圏、併存疾患とする。
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