研究課題
1.従前の研究においてヒトDNase I遺伝子に二か所の転写開始点(exon1およびexon1a) を同定した。血中DNase Iの由来部位を明らかにするため、諸臓器における二つの開始点からの転写産物を定量したところ、exon1aからの発現はユビキタスに起こっており、他方exon1からの転写はDNase I活性の臓器分布に対応するような臓器特異的であった。従って、活性型酵素を産生する転写産物はexon1からのものであると考えられた。2.臨床症例の検体数を増やし、血清中のDNase I活性レベルを調べたところ、急性心筋梗塞罹患者における高DNase I活性レベルが確認された。3.自己免疫疾患発症に係るヒトDNase familyとしてDNase I、IIおよびI-like 3遺伝子について、活性の減弱・消失をきたすfunctional SNPsを検索するため、これら遺伝子内に座位する全ての非同義置換型SNP(61、35及び41在位)についてfunctionalityおよび遺伝的多様性を調べた。その結果、それぞれ9、4及び5座位のloss-of-function型酵素を産生するfunctional SNPsを同定した。さらに、3大人種を含む異なる14集団において、対応するアレルは見出せず、すべてmono-allelicな遺伝型分布を示した。従って、これらloss-of-function型酵素を産生するfunctional SNPsは、遺伝的多様性は極めて乏しいものの、自己免疫疾患の遺伝的リスクファクターとなることが明らかとなった。さらに、SNPのタンパク機能への影響を予測するPolyPhen-2は少なくともDNase family遺伝子における活性の減弱・消失をきたすfunctional SNPsの予測に有効なツールとなることが検証された。
2: おおむね順調に進展している
以下の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。①本研究の遂行によって、関連研究を含めその成果を6報の査読ある欧文学術雑誌に公表した。②心筋梗塞発症に伴うDNase I動員に関与する遺伝子発現調節を明らかにするための端緒となる、DNase I遺伝子における実質上の転写開始点が同定できた。③心筋梗塞の診断マーカーとしての血中DNase I活性の有効性が追認できた。④自己免疫疾患発症に係る疾患感受性遺伝子としてのDNase family遺伝子の病態遺伝学的基盤として、loss-of-functionを産生するfunctional SNP群が網羅的に同定できた。
①本年度に得られた知見を基に、DNase I遺伝子発現調整を解明するための分子生物学的解析を進める。さらに、酵素活性発現にはalternative splicingが大きく関与することを従前の研究で明らかにしており、alternative splicing のin vivo酵素活性への影響を精査する。②症例数を増やし、血中DNase Iの診断マーカ―としての有効性をさらに検証する。③Loss-of-function型を産生するSNPの予測にはPolyPhen-2が有効であることを明らかにしたので、DNase family遺伝子についてPolyPhen-2で予測されたSNPのfunctionalityをさらに実証する。④DNase I familyに属するDNase I-like 2 (DNase 1L2)は尋常性乾癬に見られる不全角化病変に関与することが報告されている。そこで、DNase 1L2遺伝子に座位する非同義置換型SNPsに着目し、遺伝的リスクファクターになりうるfunctional SNPsを網羅的に検索する。さらに、皮膚上皮細胞の角化過程におけるDNase 1L2の発現変動を精査する。⑤得られた研究成果は査読ある欧文学術雑誌等で積極的に公表する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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