研究課題
極端なやせを追求する神経性やせ症(anorexia nervosa: 以下ANと略)患者は、若年女性に多く、最も死亡率の高い精神疾患である。ANの早期診断、治療、予防法の開発が切に望まれているが、未だ十分ではない。本研究では、AN患者の腸内細菌叢に着目し、健常者と比較することでその詳細な特徴を明らかにするとともにAN患者の腸内細菌叢を移植した“AN型人工菌叢マウス”を用いて、AN患者に見られる腸内細菌叢の異常が、実際の体重変動や行動特性の発現に関与しているかについて検討した。平成31年(令和元年度)は、AN患者の腸内細菌を無菌マウスに移植して作製した“AN型人工菌叢マウス”を用いてAN患者の腸内細菌が体重制御や行動特性の発現にどのように影響しているかについて検討した。その結果、“AN型人工菌叢マウス”では、健常女性の糞便を移植して作製した人工菌叢マウスと比較し、体重増加が不良であった。この結果は、“AN型人工菌叢マウス”では、摂取した食事成分から栄養を抽出する効率、いわゆる栄養効率が低下していることを示唆している。また、“AN型人工菌叢マウス”では、健常女性の糞便を移植して作製した人工菌叢マウスと比較し、不安様行動が高かった。さらに“AN型人工菌叢マウス”に認められた高い不安レベルはBacteroides vulgatusを前投与することで減弱した。以上の結果はANに特徴的な病理の一部は腸内細菌を介したメカニズムによる可能性を示している。これらの結果を米国内分泌学会誌であるEndocrinology誌に報告した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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