研究課題/領域番号 |
16H05281
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
黒田 由紀子 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, 研究員(移行) (70398014)
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研究分担者 |
三ツ井 貴夫 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (80294726)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PARK2 / miRNA |
研究実績の概要 |
パーキンソン病は、黒質を中心とした神経細胞の変性を特徴とした緩徐進行性疾患であり、種々の治療にもかかわらず病状は徐々に進行する。近年、家族性パーキンソン病の原因遺伝子が相次いで発見され、その解析を通して孤発性パーキンソン病の病態の解明が試みられつつある。パーキンは最も高頻度に発症する家族性パーキンソン病の原因遺伝子(PARK2)である。我々はPARK2の病態解明を進める中で、細胞内ミトコンドリアおよび核分画においてパーキンと結合した数種類のmicroRNAを同定した。さらに、予備的検討の結果、この中のmiR-132のプロセッシングにパーキンが関与していることが示唆された。本研究ではパーキンソン病モデル培養細胞においてmiR-132制御異常が認められるか否か、およびこのmiRNAが治療ターゲットとなり得るか否かに焦点をあてて検討する。 本研究は「miR-132がパーキン蛋白と特異的に機能連関しており、パーキン遺伝子欠損症および孤発性パーキンソン病の治療ターゲットとなりうるか否か」という課題を解明するために計画された。我々は予備的検討結果から、核およびミトコンドリアにおいてパーキンはDroshaと結合していること、もっとも強い関連を示すmiRNAはmiR-132であること、パーキン遺伝子欠損症(PARK2)患者皮膚由来のfibroblastではmiR-132の産生が低下していることを見出した。本研究ではこれを受けて、miR-132がパーキン蛋白と特異的に機能連関していること、miR-132の産生抑制がドーパミン作動性神経細胞において、核およびミトコンドリア遺伝子の転写に影響があるか否か、およびmiR-132の産生抑制がPARK2の病態を悪化させる因子となっているのか否かを多角的側面から明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cell line由来培養細胞(HeLa細胞およびSH-SY5Y細胞)を用いてパーキンの過剰発現ならびに発現抑制によりmiR-132が変化するか否かをreal-time PCR法および digital PCR法により検討を行ったところ、期待通りのデータが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
<平成30年度> 1.ドーパミン作動性神経細胞における遺伝子発現に対するmiR-132の影響 miR-132の産生がドーパミン作動性神経細胞においてどのような影響を及ぼしているのかを、核およびミトコンドリア遺伝子の発現の側面から検討する。遺伝子発現は主にマイクロアレイで評価する。具体的にはSH-SY5Y細胞にmiR-132を導入し、増加あるいは減少するmRNAをアレイで解析する。さらに、前述のヒト健常およびPARK2患者fibroblastにおいて発現するmRNAを比較し、miR-132導入時と同じ挙動をとるmRNAが存在するか否かを検討する。 2.miR-132のパーキンソン病の病態における意義 miR-132の産生抑制がPARK2の病態を悪化させる因子となっているのか、あるいは結果として認められるものであるのかを明らかにするため、我々は上記健常・患者由来fibroblastにmiR-132を導入した場合にcell viabilityが改善するか否かを検討する。さらにrotenone/MPTP処理を行ったドーパミン作動性神経細胞(SHSY5Y)において、miR-132を導入した場合にapoptosis/cell viabilityが改善するか否かを検討する。この研究により、miR-132がPARK2および孤発性パーキンソン病の治療ターゲットとなりうるか否かが明らかになると考えられる。
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