研究実績の概要 |
申請者らはウイルス排除後にも依然発癌リスクが存在し(Hepatology 2010, 2013)、発癌ゲノム変異は病因により異なり予後と関連することを明らかとした (J Gastroenterol 2015)。本研究では、発癌初期及び進展を規定する遺伝要因、およびウイルス排除後あるいは増殖制御下における発癌に関与する遺伝要因を解明することを目的としている。本年度は、特に多段階肝発癌における経時的ゲノム異常を明らかとするために、背景肝、異型結節、高・中・低分化肝細胞癌に至る各分化段階の手術標本および同一結節内に異なる分化度の腫瘍組織を内包する結節内結節のFFPE組織標本本を対象として、LCMを用いて、分化度の異なる各段階の腫瘍結節を正確にサンプリングし、ゲノムDNAを抽出後次世代シークエンサーを用いてゲノム解析を行った。FFPEサンプルから抽出したDNAの断片化は著しくPCRベースの解析が困難であったため、制限酵素を利用したHaloPlexを用いて解析した。腫瘍部と非腫瘍部のペアでデータが得られている検体について腫瘍部にのみ変異を認めるものをその検体の腫瘍部の変異として扱った。その結果、コントロールを含む7検体が解析対象となり、6検体14癌関連遺伝子29か所に変異を認めた。LGDNで6遺伝子(NOTCH1, TP53, STK11, KMT2C, RET, CCNE1)、早期肝癌では11遺伝子(NOTCH1, TP53, KMT2C, PIK3CA, SMO, FGFR3, TSC1, ARID2, AXIN1, TSC2, KEAP1 )に変異が検出された。LGDN, 早期肝癌で検出された癌関連遺伝子中にはTP53, ARID1, AXIN1, PIK3CA, KEAP1等が含まれおり、多段階発癌の初期段階でも肝細胞癌のドライバー遺伝子変異が存在する可能性が示された。
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