研究課題
申請者らはウイルス排除後にも依然発癌リスクが存在することを明らかとしてきた(Hepatology 2010, 2013)。本年度は、半導体シークエンサーを用いて肝細胞癌関連遺伝子プロファイルを網羅的に解析し、HCV排除(SVR)の有無および核酸アナログ(NUCs)によるHBV複製制御の有無による発癌要因の差異について検討した。対象は肝切除をした142例。癌部と背景肝において癌関連54遺伝子2910箇所のhotspotに対してdeep sequenceを施行し、TERT promoter領域のhotspotについては direct sequenceとdeep sequenceを行った。また、HBs抗原陽性例においてはHBV integrationをIllumina Miseqを用いて網羅的に解析した。C型肝癌ではTERT promoter変異84%, CTNNB1変異61%, TP53変異28%とTP53 変異は少ないが (p = 0.002)、TERT promoter変異が多く (p = 0.003)、SVRの有無による遺伝子変異の頻度に差は認めなかった。B型肝癌ではTP53変異 67.9%, TERT promoter変異 30%, CTNNB1変異 11%で遺伝子変異を認め、HBV integrationを93%に検出しヒト側ではTERT、MLL4、MYO7A が多かった。NUCs内服の有無でHBV integrationの頻度に差はなかったがTERT promoter変異はNUCs内服群で内服していない群と比較して低下しており、HBV DNA検出感度未満の症例で有意に少なかった(p = 0.02)。これらの解析結果から、C型肝炎ではウイルス排除の有無で遺伝子変異による発癌機序の違いは明らかではなかったが、B型肝炎ではHBV複製制御の有無で異なることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、HCV排除の有無および核酸アナログ薬によるHBV複製制御の有無による癌遺伝子プロファイルの差異に関して、高頻度に変異がみられる遺伝子について検討することができた。しかし、変異が低頻度の遺伝子の解析や結果の検証のためには更なる症例の集積と解析が必要である。
HCV排除後やHBV制御下の発癌に関与する遺伝要因を解明するために、症例を集積して更なる解析を行う。今回、B型肝癌の発癌にHBV integrationが大きく関与することが明らかとなったことから、更にHBVゲノムと宿主ゲノムの相互作用と発癌機構を解明するために、HBs抗原持続陽性例に加えHBV既往感染からの発癌例を対象として、HBV-宿主遺伝子の関連を解析する。また、これらの検討からin vitroにおける発癌機構を解明するために必要なHBV-宿主キメラ遺伝子等の基盤情報を得る。本研究ではこれらを統合的に推進することで肝発癌機構の全容解明に関わる知的・技術的基盤の確立を目指す。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 13件、 招待講演 9件)
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