B型肝炎ウイルス(HBV)の感染には、急性期に多量のHBs抗原が放出された後に宿主免疫応答が誘導されHBs抗原量が減少する一過性感染と、HBs抗体が検出されずHBs抗原が長期間にわたって放出され続ける持続性感染がある。またHBワクチンを接種してもHBs抗体を産生しないノンレスポンダーが存在するが、ワクチン接種時のB細胞応答にどのような違いがあるのかは明らかにされていない。そこでHBs抗原に特異的なB細胞応答の解析システムを確立し、HBワクチンに対するB細胞応答を評価した。 B細胞応答の評価法として、HBs抗原特異的Enzyme-Linked Immuno Spot (ELISPOT) assayを作成した。HBs抗体を分泌するハイブリドーマを用いて検証を行い感度が十分に高いことを確認した。次にHBs抗原で免疫したマウスのB細胞応答を評価した。HBs抗原を4匹、生理食塩水を3匹のマウスに皮下注射し、21日後に追加免疫した。初回免疫後7日目と28日目に採血し、末梢血単核細胞(PBMC)におけるHBs抗原特異的B細胞の頻度と血清HBs抗体力価を測定した。その結果、HBs抗原で免疫したマウスでは100万個のPBMC中に平均して約40個のHBs抗体分泌細胞がスポットとして検出された。一方、コントロール群ではほとんど検出されなかった。HBs抗体分泌細胞の数は、血清HBs抗体力価とおおよそ相関していたが、HBs抗体力価の方が個体間のばらつきが大きかった。さらにHBワクチンの接種を受けた健常人2名の血液より単離したPBMCのB細胞応答を評価した結果、38および43のHBs抗体分泌細胞がスポットとして検出された。血清HBs抗体力価はそれぞれ309IU / Lおよび550IU / Lであった。この結果から、ヒトにおけるB細胞応答の評価でもELISPOT assayは有用であることが示された。
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