研究課題
本研究では、心血管疾患を中心とする生活習慣病の発症機序について、システム間連携の観点から全く新しい理解を進めるとともに、新規治療標的の同定を進めることを目的とする。これまでに心臓が圧負荷に対して脳―心-腎の連携によって恒常性を維持していること、このメカニズムの破綻が心不全を惹起することを見いだしている。また、肥満においては内臓脂肪組織に始まった慢性炎症が他臓器へ波及・拡大することが動脈硬化や2型糖尿病発症に重要であることを見いだした。本研究では、心血管疾患を中心とする生活習慣病の発症・進展機序について、多システム間連携による恒常性の維持とその破綻の観点からその分子機序を明らかにすることを目指す。①腎臓による心筋間質細胞・心筋細胞の遠隔制御機構の解析。腎臓で発現する分泌蛋白・サイトカインの網羅的解析を行った。また、腎臓由来GM-CSFの心臓に対する作用解析を行った。②脳・神経系による心臓・腎臓連携の機序の解析。神経系のシグナルが腎臓集合管上皮細胞に与える作用を解析し、β2受容体シグナルが重要であることを明らかとした。③システム間連携を仲介する新たな分子機序の探索。心臓組織マクロファージの増殖機構について、単球由来のマクロファージの寄与を心不全モデルや老化モデルで解析した。その結果、加齢に伴い単球由来マクロファージの寄与が増加し、それに伴い心臓組織マクロファージのエピゲノムも変動することを見いだした。この変化が、加齢に伴う心機能の低下に寄与している可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の腎臓由来メディエータの解析、神経シグナルによる腎臓やマクロファージの応答について、ほぼ計画通りの解析を行った。また、肥満に加えて老化によっても単球由来マクロファージのエピゲノムが変動するという全く新しい知見を得た。
腎臓から心臓への作用機序については、GM-CSFの作用の分子機構の解析を進める。また、腎臓や脳からのシグナルが、心臓における心筋細胞、線維芽細胞、マクロファージの相互作用にどのように作用するかを解析する。これらの解析により、腎臓や脳のシグナルによる新たな心臓恒常性維持機構の解明をめざす。神経による作用については、腎臓に加えて心臓へのβ受容体シグナルの作用解析を進める。RNA-seq、ChIP-seq、ATAC-seqによるゲノムワイドの解析から、重要なパスウェイを同定し、そのシグナル機序への介入による生理学的意義の解析を進める。単球由来マクロファージの病態への寄与について、心不全、老化、肥満における解析を進める。組織マクロファージから単球由来マクロファージへの変遷と、単球由来マクロファージの老化や病態における変化が重なることにより、組織恒常性にどのような変化がもたらされるかを検討する。これらの解析によって同定したシグナル経路や分子について、in vivoでの介入を行い、治療標的としての意義を評価する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Medicine
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1038/nm.4326
Aging and Mechanisms of Disease
巻: 2 ページ: 16018
10.1038/npjamd.2016.18
Cell Metabolism
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10.1016/j.cmet.2016.11.009
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