研究課題
肺高血圧症は未だ治療が適切に行われないと右心不全から死に至る可能性のある難病である。我々は低酸素誘発性肺高血圧症(HPH)モデルマウスにおいて、IL-6/Th17/IL-21/M2マクロファージからなる炎症シグナルが肺高血圧病態で重要な役割を担う可能性を報告した(Hashimoto-Kataoka et al. PNAS2015)。マウスのHPHモデルは軽症~中等症の肺高血圧症であるため、重症肺高血圧症のモデル作製が可能なラットでのこのシグナル軸の役割を明らかにするため、本年度はIL-6欠損(KO)ラットおよびIL-21受容体(R)KOラットをCRISPR/Casシステムを用いてSDラットバックグラウンドで作製を行った。IL-6KOラットはヘテロ接合体同士の交配からホモ接合体が期待されるメンデル比で得られてviableであることが明らかとなった。また、LPS刺激による敗血症モデルを作製した際にKOラットでは血漿IL-6の上昇は全く観察されず、肺や脾臓でのIL-6のたんぱく質レベルでの発現が欠損していることを確認できた。一方、IL-21RKOラットはヘテロ接合体をスクリーニングして交配してホモ接合体を得ている。今後、ウェスタンブロット、FACS等でノックアウトの確認をする予定である。また、当研究室においてモノクロタリン肺高血圧症(PH)ラット、Sugen5416/Hypoxia/Normoxia(Su/Hx/Nor)PHラットをの系の立ち上げることに成功しており、本年度購入した設備備品を用いて血行動態解析が可能となっている。上記のKOラットと野生型でモノクロタリンPHラットおよびSu/Hx/NorPHラットを作製して、血行動態及び組織学的解析を進予定である。
2: おおむね順調に進展している
IL-6KOラットおよびIL-21RKOラットが予定通り作製出来ている。またモノクロタリンPHモデルラットとSu/Hx/NorPHモデルラットの系も研究室内で順調に立ち上げることに成功しており、今後これらのモデルでのPH病態を野生型とKOで比較検討することで進捗が期待できる。
今後は、モノクロタリンPHモデルラットとSu/Hx/NorPHモデルラットの系を上記KOラットと野生型(SD)ラットで作製して比較検討することで、IL-6/IL-21シグナル軸の役割を解明する。また、これらのKOと野生型ラットの間で、ヘルパーT細胞(Th1, Th2, Th17, Treg)やマクロファージ極性化についても検討を進める予定である。また、ヒトの肺高血圧症で効果が確立された薬剤であるエンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害剤、PGI2製剤などによる治療とIL-6KOおよびIL-21RKOの効果の相乗作用も明らかにする予定である。
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