研究課題/領域番号 |
16H05298
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中岡 良和 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (90393214)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / サイトカイン / 炎症 / interleukin-6 / interleukin-21 / 血管リモデリング / 叢状病変 |
研究実績の概要 |
肺動脈性高血圧症(Pulmonary arterial hypertension; PAH)は遠位肺動脈領域(小動脈、細小動脈)に原因不明の機序で狭窄、閉塞などの血管リモデリングを来して右室圧の上昇を誘導して、治療が適切に行われないと右心不全から死に至る可能性のある難病指定疾患である。我々は、低酸素誘発性肺高血圧症(HPH)マウスの系を用いて、IL-6/Th17/IL-21/M2マクロファージからなる炎症シグナルが肺高血圧病態で重要な役割を担う可能性を世界に先駆けて報告した(Hashimoto-Kataoka et al. PNAS2015)。一方で、マウスHPHモデルは軽症~中等症の肺高血圧症モデルであり、重症肺高血圧症で見られる亜閉塞病変(叢状病変、内膜増殖病変)等が観察されないというモデルとしての限界がある。そこで、我々はもっとも重症なPAHモデルの作成が可能なラットの系を用いて研究を進めている。SDラットのバックグラウンドでIL-6欠損(KO)ラット、IL-21受容体欠損(IL-21RKO)ラットをCRISPR/Cas9システムを用いて作製した。IL-6KO, IL-21RKOはそれぞれELISAでのLPS投与後の血清IL-6の動態と肺でのウェスタン解析で遺伝子欠損されていることを先ず確認した。さらに、野生型(SD)ラットと上記2系統のKOラットを用いて、Sugen5416/Hypoxia/Normoxia(Su/Hx/Nor)肺高血圧症ラットを作製して比較・検討をした。その結果、IL-6KOとIL-21RKOは何れも野生型に比して重症肺高血圧病態の指標が著明に軽減されていることを見出した。現在、Su/Hx/Norラットで肺組織に浸潤する炎症(免疫)細胞の動態、遺伝子発現動態に関して野生型と各KOラット間での差異に関する検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-6KOラット、IL-21RKOラットを作製して重症肺高血圧モデルラットを作製して、野生型と顕著な差異を観察しており、本研究計画で立てている仮説はこれまでの結果を総合すると、概ね間違っていないと確認されている。予定している実験を概ねこなせており、進捗は問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
重症PAHモデル動物であるSu/Hx/Norラットで、肺組織に浸潤する炎症(免疫)細胞の動態、遺伝子発現動態に関して野生型と各KOラット間での差異に関する検討する。IL-6およびIL-21依存性にPAH重症化に関わる下流標的因子を同定して、新しい重症PAH治療の標的を見出して、創薬に展開することを目指したい。これまで、PAHに対して承認されている薬剤は全て肺動脈平滑筋の収縮弛緩を標的とした血管拡張薬ばかりであり、新しい炎症シグナルを標的とする薬剤開発につながれば、大きなインパクトを臨床的に与える仕事に発展させられると期待できる。
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