研究課題
生活習慣病によってどのようにして慢性炎症が惹起されるのかを検討した。肥満に伴って脂肪組織から自己由来の遊離核酸断片(cell free DNA, cfDNA)が放出され、本来、病原体由来のDNA断片を認識するToll様受容体-9 (TLR9)をcfDNAが活性化し、脂肪組織での慢性炎症ならびにインスリン抵抗性が引き起こされた。また、アポリポ蛋白E欠損(ApoE KO)マウスにAngiotensin Ⅱ (Ang Ⅱ)を投与することで、血漿中の1本鎖DNAなどのcfDNAが増加した。大動脈において、cfDNAの受容体となりうるTLR9の発現がAng Ⅱ投与により有意に増加し、主たる発現細胞はマクロファージであった。TLR9/ApoE 2重欠損(dKO)マウスを確立し、AngⅡ投与下で誘導される動脈硬化病変を解析した。両群間で体重、血圧、血漿脂質値に差を認めなかったが、TLR9/ApoE dKOマウスの動脈硬化病変およびプラーク内脂質量は、ApoE KOマウスに比べて有意に少なかった。また、TLR9/ApoE dKOマウスの腹部大動脈において、MCP-1などの炎症性物質の発現やマクロファージの浸潤が減少していた。さらに、骨髄移植実験により、血管壁より骨髄のTLR9が重要であることが明らかとなった。また、TLR9のアゴニストやAng Ⅱなどで傷害を与えた血管内皮細胞を用いてマクロファージを刺激することで、NF-κBシグナルの活性化が認められ、TNF-αやMCP-1などの炎症関連分子の発現が有意に増加した。以上より、血管傷害により遊離したcfDNAが、マクロファージTLR9を活性化し血管の炎症を惹起し、動脈硬化の進展を促進することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画どおり、TLR9とApoE欠損マウスの作成に成功して、興味深い結果をすでに得ている。予定どおり、順調に研究は進行している。
予定どおり、生活習慣病によっておこる血管細胞の死が、マクロファージなどの炎症細胞を活性化して、慢性炎症を惹起する分子機序について、in vitro ならびにin vivo において検討する。
すべて 2016
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