研究課題/領域番号 |
16H05303
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 杏林大学, 医学部, 教授 (20170764)
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研究分担者 |
片岡 雅晴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20445208)
蒲生 忍 杏林大学, その他部局等, 特任教授 (90122308)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 次世代シークエンサー / バイオバンク / 肺動脈性肺高血圧症 / 難病循環器疾患 / 発症原因遺伝子 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症Pulmonary Arterial Hypertension(PAH)は、肺動脈の内膜や中膜が肥厚して肺動脈圧が上昇し、右心不全を起こす生命予後不良の指定難病である。PAH難病登録患者数は全国約3500名で、そのうち約3/4が原因を特定できない「特発性PAH(idiopathic PAH: 以下IPAH)」と鑑別される。2000年に染色体2q33に存在する”2型骨形成タンパク受容体(以下BMPR2)遺伝子”の変異が発見された。しかしながら、BMPR2遺伝子異常はIPAHの約25%、家族性PAHの中でも70%程度である。ゲノムワイド関連解析や次世代シークエンサー(以下、NGS)での変異解析や発現解析が普及しつつあるが、未だにBMPR2に次ぐ新規発症関連遺伝子やepigeneticな制御は発見に至っていない。即ち、IPAHの過半では原因を特定出来ていない。 多施設共同体制にて、肺高血圧症バイオバンクを構築し、PCR-ダイレクトシークエンス法による遺伝子変異解析系、またエキソン欠失に注目して、MLPA法による解析を進めた。 BMPR2遺伝子変異は日本人患者においても海外文献報告と同頻度のIPAHの約25%に見出した。さらにエキソン欠失ではAlu配列を介する非対立遺伝子間相同組換と非相同組換の二種の機構が存在することを見出した。また、BMPR2遺伝子異常を有していないPAH患者のDNA検体多数を用いて全エキソーム解析を実施した。この結果、BMPR2遺伝子とは異なる極めて有力な複数の新規発症原因遺伝子候補を絞り込むことに成功した。一群の遺伝子は、細胞接着や細胞構造形成を制御する遺伝子群でありPAHの表現型に係わると推測された。これに加えP発症感受性に係わると推測される遺伝子の変異がPAH患者に高頻度に存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオバンクの構築、バイオバンク検体での遺伝子解析、次世代シークエンサーを用いた新規発症原因遺伝子候補の選定など、着実な進捗と成果を挙げており、当初の計画にそって概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規発症原因遺伝子候補について、より詳細な機能解析を進め、IPAH発症病態の全容解明に向けて引き続き取り組む。また、本遺伝子変異を有する細胞株を用いたin vitroでのハイスループットスクリーニング実験等を進め、個別化医療の実現に向けた創薬ターゲットの選定等を施行していく予定である。本研究によりBMPR2遺伝子以外の新規発症原因遺伝子が同定され、その機能解析も進むと、患者個々の発症病態に即した適切な治療を検討できる可能性が広がり、個別化医療の実現に近づくと期待される。
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