研究課題/領域番号 |
16H05306
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
宮里 幹也 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50291183)
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研究分担者 |
日野 純 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40260351)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペプチド / ニューロメジン / 自律神経 / 循環調節 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様な標的や作用を有する生理活性ペプチドに注目し、消化管と循環器系の中枢を介した臓器間ネットワーク機構に焦点をあて、消化管ペプチドの多様な作用の解明を目指す。 1.迷走神経を介する循環制御ネットワークに関与する新規ペプチドの探索については、中枢を介した臓器間ネットワークに関与する新規生理活性ペプチドの探索のため、迷走神経節において生理的負荷で変動し、ペプチド性リガンドが予想されるオーファンGタンパク質共役型受容体を3種類選択して、受容体安定発現細胞株の構築を行い、ラット消化管・脳を用いて、リガンドスクリーニングを行った。また、新たな活性検出系としてTGFα切断アッセイを導入した。 2.ニューロメジン類およびその関連ペプチドによる循環調節機構の解明については、脳腸ペプチドであるニューロメジンU(NMU)について、1型および2型の2つの受容体における作用調節を明らかにする目的で、それぞれの受容体に特異的なアゴニストを開発した。これらのアゴニストを用いた末梢作用の検討を進めた。また、NMU前駆体タンパク質から産生されると予想される新規ペプチドの精製・単離および構造決定を行った。 3.循環器疾患モデルマウスにおける生理活性ペプチドの治療応用の検討については、循環器疾患の基盤となるエネルギー代謝調節に関わる因子として、BMP-3bの新たな機能に着目し、脂肪細胞特異的過剰発現マウスを作出して、高脂肪食性肥満モデルにおいて解析を進めた結果、耐糖能改善作用を伴う抗肥満作用やエネルギー消費亢進を示すことが判明した。その作用機序の一つとして、過剰発現マウスの脂肪組織において、脂肪細胞分化に必須のPPARγが抑制されていること、さらに、PPARγの標的因子である脂肪酸トランスポーターが抑制されていることが判明し、脂肪酸取り込み低下による脂肪組織量減少というメカニズムが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.迷走神経を介する循環制御ネットワークに関与する新規ペプチドの探索については、オーファン受容体安定発現細胞株を構築し、リガンドスクリーニングに着手できた。また、新たな活性検出系を導入できた。 2.ニューロメジン類およびその関連ペプチドによる生理機構の解明については、開発したNMUの2種類の受容体にそれぞれ選択的なアゴニストの末梢投与による機能解析を進めた。また、NMU前駆体タンパク質から産生される新規ペプチドを単離・同定した。 3.循環器疾患モデルマウスにおける生理活性ペプチドの治療応用の検討については、循環器疾患の基盤となるエネルギー代謝調節に関わる肥満・糖尿病におけるBMP-3bの機能について、過剰発現マウスの解析により明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
1.迷走神経を介する循環制御ネットワークに関与する新規ペプチドの探索については、構築したオーファン受容体安定発現細胞株および一過性発現系を用いて、脳および消化管を中心とした迷走神経支配領域の組織を材料として、新たに導入した活性検出系を用いてさらにリガンド探索を進める。 2.ニューロメジン類およびその関連ペプチドによる生理機構の解明については、末梢におけるNMUの循環調節を含む作用を明らかにするために、ラットやマウスへのNMUおよびこれまでに開発した2種類の受容体にそれぞれ選択的なアゴニストの末梢投与による循環調節などの生体調節機能解析を行う。また、新たに単離・同定したNMU前駆体タンパク質から産生される新規ペプチドについて、循環調節機能、自律神経制御機能、内分泌・代謝機能などについて機能解析を進める。 3.循環器疾患モデルマウスにおける生理活性ペプチドの治療応用の検討については、グレリンおよびグレリン受容体欠損マウス、ナトリウム利尿ペプチド(NP)やその受容体・BMP-3b遺伝子改変マウスなどを用いて、循環器疾患およびその関連疾患モデル動物におけるグレリンやNP、BMP-3bなどの生体内因子の意義の解析を進める。
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