研究課題
本研究では、COPDの病態におけるgrowth differentiation factor11(GDF11)とオキシステロールの役割を解明する、並びに肺胞マクロファージにおけるエピゲノム変化を明らかにする、という点から研究を遂行している。1) COPDにおけるGDF11の役割について-56名のCOPD患者と31名の健常対照者を研究に組み入れ、血漿中のGDF11について測定したところCOPD群では有意に血漿中のGDF11の産生が低値であり呼吸機能との関連が見られた。同サイズの検証コホートを用いて検討したが同様の結果であった。本研究結果は、現在英文誌に投稿中である。2) COPDにおけるオキシステロールの役割について-以前の研究で、COPD患者の気道では、オキシステロールの一種である27-hydroxycholesterol (27-OHC)の産生が増加しており、COPDの肺の炎症に関与することを明らかにした。本研究では、オキシステロールが肺構築細胞に作用し、プロスタグランジンや活性窒素種の産生を介して老化を来すことを明らかにした。本研究結果は、英文誌に投稿し受理されている(Hashimoto Y et al. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2016)。3) COPD肺細胞におけるエピゲノム変化-肺胞マクロファージに着目しエピゲノム変化を明らかにすることを目的に研究を開始した。一方、研究の過程で肺胞マクロファージでは細菌貪食に関わるCD169 (Siglec-1)の発現が低下していることが明らかになった。COPD患者由来の肺胞マクロファージでは細菌の貪食能が低下していることが報告されていることから、今回得られた知見は、その機序を解明する手掛かりになる可能性がある。現在、CD169の機能解析を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
本研究は現在、概ね順調に推移している。GDF11の研究では、英文誌に投稿中であり、論文化を急ぐ。また、現在、COPDの身体活動性とGDF11の関係について検討を行っており、興味深い結果が得られている。今後、症例数を増やし、検討を重ねる予定である。オキシステロールの研究では、27-OHCの長期曝露によって肺構築細胞が細胞老化を来すことを証明し、すでに英文誌に発表済みである。今後は、オキシステロールの生物活性について炎症の持続、酸化ストレスの観点から明らかにしていく予定である。肺胞マクロファージのエピゲノム解析の研究では、細菌貪食に関わる受容体であるCD169の発現が低下していることを明らかになった。COPD患者のマクロファージでは細菌貪食能が低下していること、感染による増悪がCOPDの予後を左右することから、本分子の機能解析を行うことはCOPDの病態を解明する上で重要と考える。今後もin vitroの系を用いて、CD169の遺伝子発現を調節した際に生じる表現型を明らかにすることで機能解析を推進していく予定である。併せて、エピゲノム関連、特にヒストン蛋白のメチル化、アセチル化、ニトロ化を明らかにし、遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにしていく予定である。
本研究課題は、次年度が2年目になる。3つの研究課題のうちGDF11に関する研究では、概ね研究は順調に進行しており、結果を英文誌に投稿し、現在revision中である。現在では、上述したようにさらに研究を進めて、GDF11と身体活動性について検討を加えているところである。既にGDF11は測定済みであることから今後は、対象患者の身体活動性を3軸加速度計を用いて測定していく予定である。オキシステロールの研究はすでに長期曝露で肺構築細胞が細胞老化を来し、その機序まで明らかにした。今後は、得られた検体を用いて細胞老化を来す酸化ストレスとの関連について新規の抗酸化物質である活性硫黄分子種に着目し、検討を行っていく予定である。マクロファージに関するエピゲノム研究は、新たな病態関連分子であるCD169の発現について明らかになったので、今後もCD169の発現を調節した際に、細菌貪食能や炎症性サイトカインの産生が変化するかについて検証する。現在、患者由来の肺胞マクロファージをFACSを用いて分離精製しているところである。今後、ヒストン蛋白のメチル化、アセチル化、ニトロ化を順次、確認するために、さらに人員を増員し研究の推進を図る予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (26件) (うち国際共著 3件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 17件、 謝辞記載あり 20件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 図書 (1件)
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