研究実績の概要 |
肺がんにおける髄膜がん腫症は、分子標的薬が一旦は奏効するが、高頻度に獲得耐性による病勢増悪の場となり患者のQOLを著しく低下させる重篤な病態である。髄膜がん腫症における分子標的薬耐性の分子機構は、これまで全く明らかにされていない。本研究では、独自に確立した髄膜がん腫症のin vivoイメージングモデルを用い、EGFR変異肺がんおよびEML4-ALK肺がんの髄膜がん腫症における分子標的薬の獲得耐性の分子機構を解明し、治療標的を同定するとともに、耐性克服に向けた治療法のproof of conceptを示すことを目的に検討を行い、本年度は下記の成果を挙げた。 EGFR変異肺がん細胞株PC-9,をSHOマウスの髄腔に移植したのち、ゲフィチニブを連日経口投与することで、髄膜がん腫症において獲得耐性となった細胞株PC-9/LMC-GRを樹立した。PC-9/LMC-GRは、MET受容体遺伝子コピー数増加によりMETのリン酸化が亢進し、ゲフィチニブに中等度耐性を示した。MET阻害薬を併用することでPC-9/LMC-GRのゲフィチニブ感受性を回復させることができた。 次に、in vivoで髄膜がん種症におけるゲフィチニブ耐性がMET阻害薬併用により解除できるか否かを検討した。PC-9を移植した髄膜がん種症マウスにゲフィチニブを連日投与し耐性を誘導した後、MET阻害薬(クリゾチニブ)による治療を上乗せすることにより髄膜がん種症は著明に改善した。以上より、in vivoにおいても髄膜がん種症におけるゲフィチニブ耐性をMET阻害薬併用により解除できることが明らかとなった。
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