研究課題
髄膜がん腫症や脳転移などの中枢神経系(CNS)転移は肺がんの20~30%に発生し、頭痛や神経障害などを惹起して患者のQOLを著しく低下させる。EGFR変異肺がんやEML4-ALK肺がん(ALK肺がん)では、髄膜がん腫症や脳転移に分子標的薬が一旦は奏効するが、高頻度にCNS転移が耐性獲得による病勢増悪の場となることから、CNS転移は分子標的治療のsanctuary siteとよばれている。今年度は、ALK肺がんの髄膜がん種症モデルを確立し、ALK阻害薬耐性を誘導し耐性株を樹立した。さらに耐性株がEGFRリガンド発現の上昇などにより耐性を獲得していること、EGFR阻害薬を併用することでALK阻害薬耐性を克服しうることを明らかにし、現在投稿準備中である。また、肺がんや大腸がんを含む様々ながん種で検出されるNTRK1融合遺伝子異常を有するがん細胞株(KM12SM)を用い、脳転移モデルを作成した(Kita et al, Cancer Med 2017)。さらに、脳転移モデルにおいてTRK阻害薬(エントレクチニブ)耐性を誘導し、耐性株(KM12SM-ER)を樹立した。耐性株はNTRK1-G667C変異によりエントレクチニブ耐性を獲得していた。キナーゼ阻害薬ライブラリーを用いたスクリーニングでフォレチニブを耐性克服薬として抽出した。フォレチニブは、キナーゼ阻害プロファイルアッセイでTRK-A阻害活性を有し、ドッキングシミュレーションで野生型よりもG667C変異陽性のTRK-Aに親和性が高いことが示された。エントレクチニブが無効なKM12SM-ERの脳転移モデルにて、フォレチニブは脳転移抑制効果を示すことを見出した (Nishiyama et al, Clin Cancer Res 2018)。以上のように、肺がんでも検出されるNTRK1融合遺伝子陽性がんの脳転移における分子標的薬耐性の分子機構を明らかにし、耐性克服薬の同定に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29および30年度に予定していたALK肺がんの髄膜がん種症モデルの確立とALK阻害薬耐性の解明を行うこと平成29年度内にほぼ終了するとともに、NTRK1融合遺伝子異常陽性がん細胞の脳転移における分子標的薬耐性の研究も実施できたため。
①EGFR変異肺がんの第3世代EGFR-TKI耐性髄膜がん腫症のモデルにおける耐性克服治療EGFR変異肺がん細胞株PC-9のin vivoイメージング髄膜がん腫症モデルにおける第3世代EGFR-TKIの耐性の分子機構を検討する。PC-9以外のEGFR変異肺がん株でも髄膜がん腫症モデルが確立された場合には、それらのモデルを用いて同様の検討を行う。②ALK肺がんの髄膜がん腫症のモデルにおけるALK-TKI獲得耐性機構の解明平成29年度に得た結果をもとに英語論文を執筆し発表を行う
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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