ALK肺がん株をマウス髄腔内に移植したLMCモデルで、ALK阻害薬であるアレクチニブを約100日間連日経口投与し、再発した腫瘍から耐性株を樹立した。in vitroにおける解析で親株と比較し、耐性株はEGFRリガンドであるアンフィレグリンを高発現することでEGFRを活性化し、アレクチニブに耐性化していることを明らかにした。興味深いことに、この耐性株はアレクチニブ以外のALK阻害薬(クリゾチニブ、セリチニブ、ロルラチニブ)にも交叉耐性を示した。また、アレクチニブにEGFR阻害薬を併用することで、耐性株の増殖を阻害できることをin vitroにおいて示した。さらに、耐性株をマウスの髄腔に移植した髄膜がん腫症モデルでは、アレクチニブ単剤やEGFR阻害薬単剤は無効であったが、アレクチニブとEGFR阻害薬を併用することで髄膜がん腫症の進行を著明に抑制できた。以上より、EML4-ALK肺がんの髄膜がん腫症のALK耐性のメカニズムの一つとしてアンフィレグリン発現上昇を同定し、EGFR阻害薬の併用で耐性を克服できる可能性を示した。 同様に、EGFR肺がんのLMCモデルでオシメルチニブ耐性を誘導し、耐性株を得た。耐性株において耐性を誘導しうる2つの遺伝子変異を同定した。 さらに、髄液臨床検体を収集し、EGFR阻害薬耐性を示したEGFR肺がん患者の髄液と比較し、アレクチニブ耐性を示したALK肺がん患者の髄液中には高濃度のアンフィレグリンが存在することを見出した。 以上より、われわれのLMCモデルを用いることにより臨床的に意義のある分子標的薬に対する耐性因子が同定できることが明らかになった。また、本研究で同定されたアンフィレグリンは臨床的にも重要な治療標的になることが示唆された。
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