研究課題/領域番号 |
16H05309
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西岡 安彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (70274199)
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研究分担者 |
後東 久嗣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (00437641)
西條 敦郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 特任助教 (00467812)
荻野 広和 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (20745294)
埴淵 昌毅 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (80335794)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 線維細胞 / 肺がん / 血管新生 / 免疫チェックポイント分子 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
平成28年度における研究計画に沿って3つの方向性で研究を進めた。 1.線維細胞の血管新生あるいは血管新生阻害薬耐性に対するバイオマーカーあるいは治療標的としての検討においては、まず58例のヒト肺がん手術検体を用いて肺がん組織における線維細胞の同定を行った。CD45+FSP-1+線維細胞数の多い肺がん患者で予後不良を示唆する結果が得られ、線維細胞の予後因子としての可能性が示唆された。また、血管新生阻害薬のバイオマーカーとしての検討を行うため、肺がん患者末梢血中の線維細胞数についてベバシズマブ投与前と耐性化後において比較検討を行った。その結果、肺がん患者8例中5例においてベバシズマブ耐性化後に末梢血中線維細胞数の増加を認めた。 2.線維細胞の免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーあるいは治療標的としての検討においては、まずヒト線維細胞における免疫チェックポイント分子PD-L1, PD-L2, Galectin-9の発現を再確認した。その結果、ヒト線維細胞は、PD-L1、PD-L2、Galectin-9を発現し、発現レベルはPD-L1>PD-L2>Galectin-9の順であった。また、IFN-γ刺激はPD-L1, PD-L2の発現レベルを増強した。 3.線維細胞による肺がん細胞のがん幹細胞転化促進メカニズムの解明とその制御法の検討においては、線維細胞培養上清中の肺がん幹細胞化誘導因子の同定を試みた。蛋白アレイを用いた検討から、単球と比較し線維細胞の培養上清中に豊富に含まれる分子が複数検出され、各種中和抗体を用いた検討により、肺がん幹細胞化の促進には線維細胞が産生するCCL-18およびオステオポンチンの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維細胞の肺がん進展における役割を、(1)血管新生、(2)免疫チェックポイント、(3)がん幹細胞の3つの角度から検討を進める研究計画となっている。それぞれの領域ごとに平成28年度の研究の進捗状況について評価を行った。 1.血管新生については肺がん組織および肺がん患者末梢血における検討が予定どおり進行している。一方で、血管新生分子との関連の検討がやや遅れている。 2.免疫チェックポイントの角度からの検討では、予定通りヒト線維細胞におけるPD-L1、PD-L2、Galectin-9分子の発現が確認された。 3.肺がん幹細胞化促進作用の検討においては、線維細胞が産生するがん幹細胞化促進因子のいくつかが同定されたことから、当初の予定以上に研究が進展している。以上を総合的に評価し、研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の進捗状況においては、総合的におおむね順調に進展していると評価した。今後は研究計画に沿って、(1)血管新生、(2)免疫チェックポイント、(3)がん幹細胞の3つの角度から検討を進める予定である。それぞれの分野での今後の計画は以下のとおりである。 1.肺がん組織における血管新生関連分子と線維細胞について検討を行うと共に、ベバシズマブ投与肺がん患者末梢血中の線維細胞の動態解析を進める。 2.マウス線維細胞についても免疫チェックポイント分子の発現を検討し、線維細胞に発現する免疫チェックポイント分子、特にPD-L1についての機能解析を進めると共に、マウスモデルを用いて線維細胞の作用を検討する。 3.肺がん組織に発現するがん幹細胞マーカーと線維細胞の関連を検討すると共に、線維細胞による肺がん幹細胞化抑制による抗腫瘍効果の検討をマウスモデルを用いて試みる。
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