研究課題/領域番号 |
16H05310
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 利洋 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00595712)
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研究分担者 |
笠原 敬 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50405403)
北畠 正大 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60457588)
松川 昭博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90264283)
友田 恒一 奈良県立医科大学, 医学部, 病院教授 (90364059)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エピゲネティクス / 慢性呼吸器疾患 / 呼吸器感染症 |
研究実績の概要 |
申請者は慢性炎症によって誘導された遺伝子の発現はエピジェネティクスにより制御されていることに着目し、慢性呼吸器疾患モデル(気管支喘息、肺気腫、肺線維症)におけるヒストンH3K9(9番目のリジン)のメチル化酵素の一つであるSET domain, bifurcated 2 (SETDB2)の役割を引き続き検討している。 本年度はH3K9メチル化がどの因子のプロモーター領域に起こり、その発現を調節しているのかを解明するために、ChIP(クロマチン免疫沈降)-sequence法を用いて結合領域の同定を行ったが、有意な結果が得られなかった。しかし、SETDB2をsiRNAにてノックダウンすると気道粘膜の保護に重要な上皮成長因子であるAmphiregulinの有意な上昇が見られたため、 AmphiregulinはSETDB2の1つのターゲットと考え、研究を進めている。さらにマウスモデルにおいては、慢性呼吸器疾患ならびに併発する呼吸器感染症(肺炎球菌やインフルエンザウイルス)モデルの作成が確実にできることが確認でき、感染のみのマウスと比較して、慢性呼吸器疾患モデルに感染を誘導したマウスでは、肺組織における明らかな病態の悪化や、サイトカインの過剰産生(サイトカインストーム)が見られると同時に、気道粘膜の保護に重要なAmphiregulinは低下していた。 上記の結果から現在はSETDB2制御による慢性呼吸器疾患ならびに併発する呼吸器感染症マウスモデルの詳細な病態解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞特異的にSETDB2欠損を誘導するマウス(SETDB2-floxマウス)の繁殖が遅れたため
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今後の研究の推進方策 |
現在十分なSETDB2-floxマウスを確保できたため、遺伝子改変マウスを中心とした生体モデルでの慢性呼吸器疾患モデルや慢性呼吸器疾患併発モデルの解析ならびに、Setdb2で誘導されるH3K9meに対する阻害薬投与あるいは、現在作成中のSetdb2に対する抗体による慢性呼吸器疾患の呼吸器感染症に対する新規予防ならびに治療の可能性を検索すること、さらには臨床検体を用いて慢性呼吸器疾患患者における喀痰や血清、あるいは単球のSETDB2濃度と疾患の重症度や感染リスクとの相関性調査の開始も本格化でき、最適な治療介入ならびに感染予防を判断する指標としてのSETDB2測定の有用性を調査していく。
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