研究課題
EGFR変異陽性の肺腺癌細胞株であるPC-9は、EGFR-TKI添加により20%程度しか生存できない。一方、PC-9は、通常のCAFsと共培養することにより、40%程度が生存可能となった(EGFR-TKI抵抗性の獲得)。しかしながら、EGFR変異陰性肺腺癌より採取した1種類のCAFs は、EGFR-TKI投与後のPC-9生存細胞数を10%以下にまで著減させた。上記CAFs (CAFs-intensifier) に関して今までに判明した内容を下に記す。A) EGFR-TKI処理(-)状態では、CAFs-intensifierは、PC-9の生存に全く影響を与えない。B)EGFR-TKI処理(+)状態では、CAFs-intensifierは、PC-9のapoptosisを高頻度に誘導する。このことは、本CAFsが、EGFRシグナルとの合成致死性を示すシグナルをがん細胞に伝えていることを意味している。cDNA microarrayを用いた結果、CAFs-intensifierにはコントロールCAFsと比較してCD200mRNAが有意に高発現していた。次に、sh-RNA法を用いてCAFs-intensifierにおけるCD200をノックダウンした結果、PC-9にapoptosisを高頻度に引き起こす現象はキャンセルされた。さらに、CD200をコントロールCAFsに過剰発現させると、PC-9に対するapoptosisの頻度は亢進した。ヒト肺腺癌切除症例を用いた検討より、CD200陽性CAFsを認めた症例では、EGFR-TKI投与後のPFSが長い傾向を示した。以上より、CAFsに発現しているCD200は、EGFR-TKI感受性を亢進することが示された。今後は、この合成致死分子機構の解明を行い、EGFR変異陽性肺腺癌患者に対する新しい治療法の提案に向けた分子基盤の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
CAFsに発現している責任分子の同定を行った。今後は、癌細胞側にどのような分子機構が働いているのかを検討する。
1) CD200リコンビナントタンパクをPC-9細胞に添加し、EGFR-TKI感受性が増強するかを確認する。具体的にはapoptosisが増加するかを検討する。並行してPC-9細胞に発現している上記候補分子の受容体の同定を試みる。2) 候補分子のリコンビナントタンパクを添加した際、受容体を介してPC-9細胞にどのような シグナル変異が起こり、apoptosisが誘導されているのかを検討する。具体的にはリン酸化アレイを用いて関連シグナルの同定を行う。3) 上記にて同定したシグナルの抑制薬+EGFR-TKIの併用により、PC-9細胞のapoptosisが減少するかを検討する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep.
巻: Apr 21;7:46662 ページ: 1-13
10.1038/srep46662.