研究課題
EGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬(以下EGFR-TKI)は、EGFR遺伝子変異を有する肺腺癌の治療に使われており、臨床的にも一定の効果が確認されている。しかしEGFR遺伝子変異を有していても、約20%の症例では初回治療に抵抗性を示すことが知られている。この初期耐性の原因として、がん細胞の周囲に存在する線維芽細胞の関与が報告されてきた。我々は、肺癌切除検体より採取した線維芽細胞を用いた研究過程で、肺腺癌細胞のEGFR-TKI感受性を増強する線維芽細胞の亜集団を見出した。本研究の目的は、上記線維芽細胞の生物像を解明し、EGFR-TKI感受性を増強する分子機構を解明することである。2016年度、2017年度は、上記現象を引き起こすCD200分子発現CAFsの同定を行った。本年度は、昨年度に引き続き、1)癌細胞側に引き起こされる分子機構の解明、2)この現象が、抗がん剤を用いた時にも起こりうる現象かどうか、およびその分子機構の解明、を試みる。
3: やや遅れている
当初の仮説を検証するため、がん細胞側に発現している候補分子(CD200R)を検討した。しかしながら、上記受容体は、RNAレベルでの発現を認めたものの、細胞表面の蛋白レベルでの発現を確認できなかった(FACSにより検討した)。以上の結果より、他受容体の候補分子も検討中である。
本年度は以下の実験を行う。1)使用したPC-9細胞にCD200R分子の発現誘導が引き起こされるかどうか?定常状態では、PC-9細胞にはCD200R膜蛋白の発現は認められなかった。そこでEGFR-TKI投与中に、CD200R分子の発現誘導が起こるかどうかを検討する。具体的にはEGFR-TKI投与後、day1, day2, day 3にPC-9細胞を回収し、FACSにより、CD200R発現を検討する。2)CD200分子の細胞外ドメイン欠損体を数種類作製する。これらをCAFsに過剰発現し、PC-9細胞と共培養、EGFR-TKI処理を行う。CD200のどの領域が、感受性亢進に重要な領域かを同定する。3)他のCAFsを用いて同様にPC-9細胞と共培養、抗がん剤処理を行う。全体で約10種類のCAFsを予定する。抗がん剤感受性を亢進するCAFsを今までのスクリーニング方法と同様の方法を用いて同定する。さらに、CFAsに発現している責任分子を同定する。同定された責任分子とCD200分子との分子相関、あるいはレセプターを介したシグナルの類似性の解明を行う。4)上記の研究を介して、薬剤感受性を亢進するCAFsそして、それらが形成する微小環境の特徴を明らかにする。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep.
巻: Apr 21;7:46662 ページ: 1-13
10.1038/srep46662.