研究課題
慢性腎臓病(CKD)は脳梗塞・心筋梗塞の素因となり、また進行すると人工透析が必要になるなど健康への重大な影響をもたらすことからその対策が求められている。本研究で注目する血中タンパク質AIMは、急性腎障害(AKI)において尿細管内腔に蓄積した壊死細胞の除去を促進することが最近判明したが、その特性からCKDにおいてもその回復や予防に効果があることが期待される。本研究ではCKDにおけるAIMの役割を明らかにし、AIMによるCKD治療・予防法開発の可能性を検討するとともに、ヒト腎疾患患者における血中AIM濃度と病態や予後等の総合的な解析を行うことでAIMに基づく新しい診断法の樹立を目指すものである。H28年度は、AKIを発症後、腎機能が完全に回復せずCKDへ移行するケースを想定し、AKIモデルである腎虚血再灌流(IR)を繰り返しマウスに施すことでCKDモデルの構築に取り組んだ。その結果、♂の野生型マウス(C57BL/6、8週齢)を用いて、片側腎IRを2回行うことで、CKD様の症状を呈するモデルが構築された。また、5/6腎摘出によるCKDモデルにおいては、C57BL6系統では誘導効率が悪く、ICR系統が適していることが既に知られており、現在我々が所有しているAIM-/-マウスはC57BL/6系統のみなので、ICRマウスにCRISPR/Cas9システムによってAIM欠損マウスの作製を行うための準備を行った。さらに研究計画にはなかったが、CKDにおける線維化におけるAIMの役割を調べるため、野生型マウスおよびAIM-/-マウスに片側尿管結紮(UUO)を施術し、解析を行った。その結果、両者において線維化の度合いに違いが見られ、AIMが障害時における腎線維化の進行と機能維持に関与している可能性が示された。ヒト腎疾患患者解析においては、様々な原疾患によるヒトCKD患者サンプルの収集を行った。
2: おおむね順調に進展している
予定していた繰り返しIRによるCKDモデルが樹立され、またさらに研究内容を深めるための遺伝子改変モデルの作製や、線維化などにも焦点をあて、解析が進んでいる。
樹立したCKDモデルをもちいてAIMのCKDにおける役割を多角的な方面から解析を行い、AIMがCKDにどのように関与するのか、その分子メカニズムを明らかにしていく。その上で、CKDの予防や治療法に利用することができないかどうかを模索していく。ヒト患者サンプルにおけるAIMの調査も進めていきたい。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 35251
doi: 10.1038/srep35251.
巻: 6 ページ: 38762
doi: 10.1038/srep38762.