研究課題/領域番号 |
16H05313
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 郷子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (60422276)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / AIM / 線維化 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)は脳梗塞・心筋梗塞の素因となり、また進行すると人工透析が必要になるなど健康への重大な影響をもたらすことからその対策が求められている。本研究で注目する血中タンパク質AIMは、急性腎障害(AKI)において尿細管内腔に蓄積した壊死細胞の除去を促進するが、その特性からCKDにおいてもその回復や予防に効果があることが期待される。本研究ではCKDにおけるAIMの役割を明らかにし、AIMによるCKD治療・予防法開発の可能性を検討するとともに、ヒト腎疾患患者における血中AIM濃度と病態や予後等の総合的な解析を行うことでAIMに基づく新しい診断法の樹立を目指すものである。 H29年度は、腎障害に感受性のあるICRマウスにおいてCRISPR/Cas9システムによってAIM遺伝子を欠損させ、ICR AIM KOマウスを作製した。さらに、腎線維化におけるAIMの役割を検討するために、C57BL/6背景の野生型マウスとAIM KOマウスに片側尿管結紮(UUO)を施術した。AIM KOマウスではWTと同様に組織全体に線維化は誘導されてはいるものの線維の密度が低く、尿細管の拡張が顕著であり、さらに、尿細管上皮細胞の傷害マーカーであるKIM-1の発現が持続することが示されると共に、尿細管の機能が低下していた。これらのことから、障害を受けた腎臓において、その機能維持と組織修復には初期の線維化が重要な役割をもつことが示され、さらに、その線維化にはAIMが必要であることが示唆された。これまで線維化は腎障害においては増悪因子としてその有害な側面が注目されていたが、初期の線維化はむしろその後の組織の修復補助と機能維持に必要であり、AIMがその誘導に関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎障害に感受性の有るICRマウスにおいてAIMの有無の影響をみるために、ICRにおいてCRISPR/Cas9を用いてAIM の欠損を試みたが、AIM KOホモマウスを得るのに時間がかかったが、今後の解析の準備が整った。一方で、UUOによる腎線維化の検討では、興味深い結果が得られた。総合的に見ておおむね順調だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ICR AIM KOマウスが樹立されたため、H28年度に作出した繰り返しIRによるCKDモデルや、5/6腎摘によるCKDモデルの解析など、CKDの解析を多方面から行うことで、AIMがCKDにどのように関与するのか、その分子メカニズムを明らかにしていく。その上で、CKDの予防や治療法に利用することができないかどうかを模索していく。ヒト患者サンプルにおけるAIMの調査も進めていきたい。
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