研究課題
Cullin3/KLHL3複合体がWNKキナーゼを捕捉し、WNKキナーゼのユビキチン化を介して分解し、腎臓内でのWNKキナーゼ分解障害によるWNK蛋白増加が下流のWNK-OSR1/SPAK-NaCl共輸送体(NCC)シグナル系の過剰亢進を起こして、偽性低アルドステロン症II型の高血圧の原因となることを明らかにした。さらに常染色体優性遺伝形式を呈するKLHL3の発症メカニズムが、KLHL3の2量体形成によって、異常なkelch repeatをKLHL3が一つでもあるとWNKを捉えられなくなるというdominant negative effectによって優性遺伝型で発症することを明らかにした。( Mol Cell Biol. 2017)。さらにWNK4ノックアウトマウスが肥満抵抗性であることを、3T3-L1細胞においてWNK4が脂肪細胞分化に伴い強力に誘導され、WNK4抑制は培養細胞における脂肪滴蓄積を障害することを発見し、WNK4がメタボリック症候群の鍵分子になりうることを報告した(EBioMed 2017)。また、腎性尿崩症の治療を検討するためにAQP2水チャネルの制御機構についての研究を行い、Wnt5aがカルシニューリン活性化を通じて、cAMPを介さないAQP2活性化機序を有し、腎性尿崩症の新しい治療薬になりうる事を示した(Nat Commun. 2016)。また、腎臓近位尿細管細胞は、塩分負荷により、IFNγ受容体の発現減少を介して、下流のJAK1/STAT1シグナルが抑制され、IFNγ誘導性のケモカインの発現を直接的に抑制することを示した(Sci Rep. 2017)。またKLHL2ノックアウトマウスを作成し、生体においてWNKキナーゼを分解する機能を有することを明らかにした(BBRC 2017).
2: おおむね順調に進展している
英文誌9報を報告し、順調に計画は進行している。
遺伝性高血圧疾患において新規に発見されたKLHL3とCullin3によるWNK分解系の発現部位や調節機構といった基本事項から、エピジェネティック制御まで幅広く行い、蛋白分解系による新規WNKシグナル制御機構の未知なる生理的役割と機能を詳細に明らかにする。また、生体での本制御系の破綻がもたらす病態を探求するためKLHL2,3およびCullin3遺伝子改変マウスの作成と解析ができており、さらに研究を発展させ、WNKシグナルに関わる遺伝子改変マウスを駆使して腎臓以外の臓器や病態での新たなWNKシグナルの機能探求を明らかにし、塩分感受性と臨床的に関連ある項目について検討を加えていく。特に、現在、骨格筋、免疫細胞、心臓については、すでに検討を行なっている、さらに脂肪細胞においては、我々が発見した脂肪分化作用への分子メカニズム的な詳細を明らかにして、WNKシグナルの新規の基質や下流分子を同定することを目指す。新規の下流ネットワークが明らかになれば、それに対して阻害薬スクリーニングを行い、臨床への発展も目指していきたい。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件)
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