研究実績の概要 |
筋強直性ジストロフィー(MyD)は、成人で最も多い遺伝性筋疾患で、骨格筋だけでなく、心筋や脳など多臓器が侵される。本症では、伸長したCTGリピートから転写された異常RNAが、スプライシング調節機構を障害して広汎なスプライシング異常を引き起こす。本研究では、MyDの病態の中心となる異常RNAをターゲットとして、核酸医薬や低分子化合物を用いたMyD治療法を確立する。特に、医学だけでなく薬学・化学生物学の革新的技術を応用して、MyDの全身症状を統合的に改善する、安全性の高い包括的治療法の確立を目指している。当該年度は、異常RNAを標的として最適化したGapmer型核酸医薬の心筋での効果を検証した。MyDモデルマウスへの核酸医薬投与により、心筋での標的RNA発現量の抑制効果を確認した。また、低分子化合物に開発においては、MyD線維芽細胞をもちいたスクリーニングにより同定されたDiamidine化合物の誘導体展開を行った。In vitroでの十分な異常CUG-RNAへの結合性を確認し、MyD細胞モデルで良好な治療効果を示した数種の化合物について、MyDモデルマウスへの腹腔内投与、およびプロドラッグ化した化合物については経口投与を行い、Clcn1, Atp2a1をはじめとするスプライシング異常改善効果、RNA凝集体形成抑制効果、筋強直症状改善効果を確認した。さらに、前年度までに同定している、MyDにおける筋萎縮に影響をおよぼすCLTC31などのスプライシング異常について、スプラシング制御型核酸医薬の開発をすすめた。MyDモデル細胞で核酸医薬のスプライシング異常改善効果を評価し、候補核酸医薬の配列最適化を完了している。
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