研究課題
HAMの病態解明におけるHAM的T細胞(CADM1+CD7+)解析の妥当性を検討するために、HAM患者220例の末梢血単核球細胞(PBMC)を用いて、CD4+ T細胞におけるHAM的T細胞の割合を、HAS-Flow法(Clin Cancer Res, 2014)により解析し、HAM患者の感染細胞ではHAM的T細胞が主な構成細胞であることを証明した。またHAM患者PBMCにおけるクローナリティ解析にて、HAM的T細胞(CADM1+CD7+)はポリクローナル、ATL的細胞(CADM1+CD7-)はモノクローナルの傾向が強いことを明らかとし、HAM患者の感染細胞においてもクローナリティの高い集団が存在し、それらの細胞はATL細胞と一部共通した特徴を有していることを明らかとした。次に、これら特徴を踏まえてHAM患者由来の感染細胞についてマクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し、HAMの病態形成に重要な炎症性遺伝子(IFNg, T-bet, CXCR3)の発現は明らかにATL細胞と比較して高く、我々のこれまでの報告(PLoS One 2009, J Clin Invest 2014)を裏付ける結果が得られた。さらに、エピゲノム修飾酵素の発現レベルについて検討したところ、EZH2遺伝子の発現亢進を認めた。そこでEZH2阻害剤のHAM患者における有効性についてin vitroで検討したところ、HAM患者由来T細胞に対する強い抗炎症活性と感染細胞の増殖抑制・殺傷活性を有することを証明し特許を出願した(特願2017-007887)。
2: おおむね順調に進展している
HAMにおいてHAM的T細胞群(CD4+CADM1+CD7+)が普遍的にみられるものなのか、さらにHAM的T細胞が、これまでに申請者らが示してきたHAM由来のCD4+ T細胞と同じ性質もしくはそれを超えたより本質的と考えられる性質を有するのか、すなわちHAMを特徴づける細胞群と定義できるかを検討し、HAMの病態解明におけるHAM的T細胞(CADM1+CD7+)解析の妥当性を検証することが出来た。またHAM的T細胞(CD4+CADM1+CD7+分画)において、エピゲノム異常の下流にあると考えられる遺伝子発現にどのような特徴的変化があるかをマイクロアレイにて網羅的に解析し、pathway解析、GO解析、GSEA解析等を行った。その結果、HAM的T細胞における特徴的な遺伝子発現プロファイルが判明し、その包括的記載が可能となった。さらにその基盤となるエピジェネティクス制御の異常について解析を進め、エピゲノム修飾酵素の発現レベルに異常が存在することを突き止め、特にH3K27メチル化酵素であるEZH2の発現亢進を認めた。そこでEZH2阻害剤のHAM患者における有効性についてin vitroで検討したところ、HAM患者由来T細胞に対する強い抗炎症活性と感染細胞の増殖抑制・殺傷活性を有することを証明した。このように、本研究によってHAMではその病態形成過程にエピゲノムの異常が深く関与することを証明しつつあり、HAMの新たな病態形成機構の解明につながる成果が得られると期待される。
HAMの病態解明におけるHAM的T細胞(CADM1+CD7+)解析の妥当性をさらに検証するために、HAMの病態をより強く反映すると考えられる髄液細胞中で、これらの割合がどのようになっているかを検討する。次に、HAM的T細胞のエピゲノムについて、MeDIP-on-chip法によりDNAメチル化の、ChIP-on-chip法によりヒストン修飾のゲノム上の分布を明らかとする。比較対象は、HAM患者T細胞中の非感染T細胞群(CD4+CADM1-分画)、健常者CD4+ T細胞、ATL細胞とし、HAM的T細胞特異的なエピゲノム異常の特徴を明らかにする。各目標症例は5症例とする。そして、これまでに得られた網羅的遺伝子発現解析の結果と統合解析を行い、HAM的T細胞に認められる特徴的な遺伝子発現プロファイルを規定するエピゲノム異常を明らかにする。また本研究課題によって発見した、EZH2阻害薬のHAMに対する有効性について検討する。具体的には、HAM患者由来PBMCで見られる自発的細胞増殖応答の実験系を用いて、阻害剤の抗増殖活性・抗炎症活性について、3Hチミジンの取り込みならびに上清中の炎症性サイトカイン・ケモカイン濃度を指標に検討する。また、抗感染細胞活性についても、プロウイルス量を指標に検討し、またHAM患者髄液から樹立したHTLV-1感染細胞株に対する薬剤の細胞増殖抑制効果、ならびにアポトーシス誘導効果について検討する。さらに各細胞集団におけるメチル化に対するEZH2阻害薬の影響をフローサイトメトリーによって定量的に解析し、どの細胞集団に対して影響が強いかについて評価する。この解析によって、HAM的T細胞を標的としたHAMに対するエピゲノム治療の非臨床POC(proof of concept)の取得が可能となる。
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