研究実績の概要 |
1) αシヌクレイン・TDP-43のPET薬剤探索と有用性評価 前年度に引き続き、αシヌクレイン病変のプローブ候補化合物を用いて、αシヌクレイン線維接種モデルマーモセットのPETイメージングを実施した。その結果、線維接種部位である片側の線条体から、神経線維投射経路に沿ってαシヌクレイン凝集体が伝播する様子を、経時的PETで捉えることに成功した。また、接種部位と線維連絡がある中脳へ伝播が及ぶのに伴って、中脳黒質のドーパミン神経が障害をきたすことが、経時的なドーパミントランスポーターPETによって明らかになった。このプローブ化合物は臨床応用可能と判定し、安全性試験など臨床評価の準備を開始した。並行して、この化合物を含む特許のPCT出願を行った。 TDP-43病変に結合する薬剤としては、正常マウスでプローブ候補の標識体の動態を評価し、良好な脳移行性と脳からのクリアランスを確認できた。次いで標識体を用いてヒト脳切片のオートラジオグラフィーを実施し、TDP-43病変蓄積部位への標識体の特異的な結合を確認しえた。これらの結果より、この標識化合物も臨床応用可能と判定した。 2) アミロイド・タウ病変に結合する化合物の評価 (a) PETによるアミロイドおよびタウ病理の意義の検討:高齢発症のうつ病患者では、精神症状を伴う症例においてアミロイドではなくタウが脳内に蓄積し、蓄積量と精神症状に相関があることが示された(Mol Psychiatry, in press)。 (b) タウ病変PET薬剤の評価:今年度は、抑制性ニューロンを賦活する薬剤をタウ病態モデルマウスに投与し、興奮/抑制バランスが是正されることを生体二光子レーザー顕微鏡のカルシウムイメージングで検証しえた。さらにこの薬剤を数カ月にわたり投与することで、タウ蓄積と脳萎縮が顕著に抑制されることを、それぞれタウPETとMRIにより明らかにした。
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