研究課題/領域番号 |
16H05328
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山縣 和也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70324770)
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研究分担者 |
吉澤 達也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40313530)
佐藤 叔史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90622598)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | SIRT7 / TR4 / DDB1 / 褐色脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
SIRT7はNAD依存性の脱アセチル化酵素であり、転写因子TR4のタンパク発現を介して肝臓における脂質蓄積量を制御している(Cell Metabolism 2014)。SIRT7によるTR4発現制御の分子機構を解明するために、TR4の分解を制御するCul4B E3ユビキチンリガーゼ複合体の構成分子とSIRT7の結合について検討を行った。その結果、SIRT7は複合体の構成因子の一つであるDDB1と特異的に結合することが判明した。次に細胞内におけるDDB1のアセチル化状態について検討を行った。HEK293T細胞にDDB1とSIRT7を共発現させるとDDB1のアセチル化が著明に低下した。以上の結果から、DDB1はSIRT7により脱アセチル化を受けることが明らかになった。 またSIRT7ノックアウトマウスでは熱産生の亢進や褐色脂肪組織におけるDio2などの熱産生関連遺伝子の発現が認められた(Cell Metabolism 2014)。SIRT7による熱産生関連遺伝子上昇のメカニズムを解明するため、マウス褐色脂肪細胞株でSIRT7をノックダウンする実験を計画した。しかし本検討で用いた褐色脂肪細胞株ではDio2の発現レベルが野生型マウス褐色脂肪組織に比して極めて低く、解析には適さないことが判明した。そこでマウス褐色脂肪組織由来の間質細胞(SVF)から分化させた脂肪細胞を検討に用いることとした。マウス褐色脂肪組織からコラーゲン処理でSVFを分離後、SV40で不死化させた細胞を脂肪細胞に分化誘導を行った。その結果、Dio2の発現レベルは通常の褐色脂肪組織における発現と同程度であったが、脂肪細胞への分化後の細胞内脂肪蓄積量が十分ではなかった。現在、脂肪細胞への分化が良好なクローンを単離中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SIRT7はNAD依存性の脱アセチル化酵素であり、転写因子TR4のタンパク発現を介して肝臓における脂質蓄積量を制御している(Cell Metabolism 2014)が、その詳細な分子機構は不明である。本年度の研究結果により、TR4を分解するCul4B E3ユビキチンリガーゼ複合体の構成成分であるDDB1とSIRT7が結合し、SIRT7がDDB1を脱アセチル化することが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的の一つはSIRT7が転写因子TR4を介して肝臓内脂肪蓄積を制御する分子機構を解明することである。本年度の検討の結果、SIRT7がTR4の分解に重要なCul4B E3ユビキチンリガーゼ複合体の構成成分であるDDB1を基質とし、脱アセチル化することが明らかとなった。そこで今後はDDB1にフォーカスした検討を進める。 また褐色脂肪細胞におけるSIRT7の役割を解明するためにはin vitroの系が必要である。今後は、マウス褐色脂肪組織由来SVFを用いた実験系を確立し、SIRT7のノックダウンの影響について検討する方針である。
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