研究課題
SIRT7は転写因子TR4のタンパク発現を介して肝臓における脂質蓄積を制御している(Cell Metabolism 2014)が、その詳細なメカニズムは不明であった。本研究の結果、SIRT7はCul4B E3ユビキチンリガーゼ複合体の構成分子であるDDB1の1121番目のリシンを脱アセチル化すること、脱アセチル化されたDDB1はDCAF1の結合が減弱するため、E3ユビキチンリガーゼ複合体の基質の分解活性が低下することが判明した。SIRT7存在下ではDDB1の脱アセチル化を介してTR4の分解が低下するためTR4のタンパク発現量が増加し、Cd36やCideaなど脂質蓄積的に働く標的遺伝子の発現が増加するため脂質蓄積が増加するというSIRT7による肝臓内脂質蓄積制御の詳細な分子機構が明らかになった(BBRC 2017)。またSIRT7ノックアウトマウスでは熱産生の亢進や褐色脂肪組織におけるDio2など熱産生関連遺伝子の発現が上昇しているが(Cell Metabolism 2014)、adiponectin-Creトランスジェニックマウスを用いて作製した脂肪細胞特異的SIRT7ノックアウトマウスの褐色脂肪組織においても熱産生関連遺伝子であるDio2やUcp1の発現上昇が認められた。この結果から、褐色脂肪組織自身のSIRT7が熱産生の制御に重要であることが明らかになった。褐色脂肪細胞におけるSIRT7の役割を解明するためにはin vitroの解析系が必要であるが、一般的に使用されている褐色脂肪細胞培養細胞株ではDio2の遺伝子発現が低いために、SIRT7の機能を検討することが困難であった。そこで新たに褐色脂肪組織由来の間質細胞(SVF)を脂肪細胞に分化させる系の構築を試み、SVFを褐色脂肪細胞へ分化させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
SIRT7は転写因子TR4のタンパク発現を介して肝臓における脂質蓄積を制御している(Cell Metabolism 2014)が、その詳細なメカニズムは不明であった。本研究の目的の一つはSIRT7による肝臓内脂質蓄積量制御の分子機構を解明することであったが、H29年度の研究成果により、SIRT7がDDB1を脱アセチル化することで脂質代謝を制御するというメカニズムが判明した。また褐色脂肪組織由来間質細胞から褐色脂肪細胞を分化させる系を立ち上げることに成功した。この分化系は褐色脂肪細胞におけるSIRT7の役割を解明する上で重要である。
褐色脂肪組織由来間質細胞から褐色脂肪細胞を分化させる系を構築することに成功したため、野生型およびSIRT7ノックアウトマウスの褐色脂肪組織由来SVFから脂肪細胞を分化させ、遺伝子発現や酸素消費について検討を行う。また白色脂肪細胞におけるSIRT7の役割についても同様の方法を用いて検討を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
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