研究課題/領域番号 |
16H05329
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
寺内 康夫 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40359609)
|
研究分担者 |
伊藤 譲 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00512980)
田島 一樹 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (00725236)
富樫 優 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (10710444)
白川 純 横浜市立大学, 医学部, 助教 (70625532)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | グルコキナーゼ / 膵島 / S100A8 |
研究実績の概要 |
GKAにより発現上昇するタンパクのEGFRに着目して、IRS-2欠損マウスやdb/dbマウス等のモデルマウスを用いてin vivo膵島での発現変化を解析し、糖代謝におけるEGFRの役割を解明し、論文化した。 GKAにより発現上昇するタンパクの一つにDamage-associated molecular pattern molecules (DAMPs) S100A8がある。膵β細胞から分泌されたS100A8は、TLR4のリガンドとして作用し、マクロファージにおいて炎症性サイトカインの発現を誘導する。高血糖および高遊離脂肪酸により惹起される膵β細胞とマクロファージとの相互作用を介した膵島炎症における悪循環が存在することが明らかにし、論文化した。 慢性的なグルコキナーゼの活性化により、オピオイドペプチドPdynが膵島で有意に発現上昇することに着目、慢性的にグルコキナーゼが活性化される高脂肪食負荷マウスの膵島においても通常食と比較してPdynの発現は有意に上昇していたため、Pdyn欠損マウスを用いて膵島におけるグルコキナーゼ活性化によるPdyn誘導の生理的意義を検証した。 IRS-2欠損マウスの膵島ではPdynの発現は上昇していた。癌抑制遺伝子であるLKB1の膵β細胞特異的ノックアウトマウスにおいて膵β胞量増加とPdynの発現上昇が報告されており、Pdynが膵β細胞の無秩序的な細胞増殖に対し負の制御を行うことにより膵β細胞量のホメオスターシスを維持している可能性がある。Pdyn欠損マウスでの膵β細胞アポトーシスの評価を行い、グルコキナーゼ活性化がPdyn発現を誘導する転写調節機序について、Pdynプロモーター領域を含んだluciferaseコンストラクトを用いたレポーターアッセイおよびPdynの既知の転写因子に対するChIP assayにより検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに研究が進み、今年度も数編論文化できた。最終年度は、膵β細胞グルコキナーゼ抑制が細胞運命決定機構に及ぼす影響の解明に挑む予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2年間の研究成果を踏まえ、膵β細胞グルコキナーゼ抑制が細胞運命決定機構に及ぼす影響の解明を進めたい。加齢とともに膵β細胞機能および量が進行性に低下するdb/dbマウスと膵β細胞特異的グルコキナーゼヘテロ欠損マウスを交配させ、膵β細胞特異的グルコキナーゼヘテロ欠損db/dbマウス等を樹立する。db/dbマウスと膵β細胞特異的グルコキナーゼヘテロ欠損db/dbマウスの2群で、インスリン分泌能、膵β細胞アポトーシス・酸化ストレス等、膵β細胞不全の程度を評価し、個体レベルでグルコキナーゼ活性抑制が膵β細胞不全に及ぼす影響を検討する。 我々は以前消化管ホルモンTFF2が膵β細胞増殖を促進することを示した(Endocrinology 2013)が、膵β細胞特異的TFF2過剰発現トランスジェニックマウスを作製したところ、生後初期に膵β細胞増殖促進を示すものの、その後膵β細胞アポトーシスが増大し、膵β細胞量低下を伴う耐糖能障害を呈した。グルコキナーゼと同じく増殖刺激の慢性刺激が膵β細胞アポトーシスを示すモデルと考えられ、その分子メカニズムの解析を通じてグルコキナーゼ慢性活性化との共通シグナルの有無を同定する。具体的には、両モデルの膵島におけるRNA-Seqおよびプロテミクス解析による発現比較を行い、両者にて発現上昇および発現低下している分子群について検証する。
|