研究課題
グルコキナーゼ活性化薬(GKA)により発現上昇するタンパクの一つにDamage-associated molecular pattern molecules (DAMPs) S100A8がある。膵β細胞から分泌されたS100A8は、TLR4のリガンドとして作用し、マクロファージにおいて炎症性サイトカインの発現を誘導する。高血糖および高遊離脂肪酸により惹起される膵β細胞とマクロファージとの相互作用を介した膵島炎症における悪循環が存在することを明らかにし、論文化した。新鮮単離ヒト膵島においても、S100A8が発現していることを確認し、ヒト膵島とヒト単球細胞株U937、パルミチン酸との共培養でS100A8が誘導され、S100A8中和抗体により、S100A8とマクロファージの相互作用による「膵島炎症」に伴うヒト膵β細胞のアポトーシスが抑制されることを見出した。S100A8-floxedマウスを作製し、視床下部への発現を認めない膵β細胞特異的なCre発現MIP-Creマウスと掛け合わせ、膵β細胞特異的S100A8ノックアウトマウスを作製した。さらに脂肪組織特異的S100A8ノックアウトマウスも作製した。高脂肪食負荷やdb/dbマウスと交配することにより、膵β細胞におけるS100A8の生体内での役割を検討した。我々は以前消化管ホルモンTFF2が膵β細胞増殖を促進することを示した(Endocrinology 2013)が、膵β細胞特異的TFF2過剰発現トランスジェニックマウスを作製したところ、生後初期に膵β細胞増殖促進を示すものの、その後膵β細胞アポトーシスが増大し、膵β細胞量低下を伴う耐糖能障害を呈した。グルコキナーゼと同じく増殖刺激の慢性刺激が膵β細胞アポトーシスを示すモデルと考えられ、その分子メカニズムの解析を行い、グルコキナーゼ慢性活性化との共通シグナルを検討した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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