研究課題
GCによる骨格筋-肝臓-脂肪組織連関を介したエネルギーフロー制御を解明するため、1)クッシング症候群モデル動物の糖脂質代謝異常における骨格筋glucocorticoid receptor(GR)の役割を明らかにすることを目的とした。【方法】7~8週齢♂の野生型マウス(WT)及びGRmKOに100 ug/ml コルチコステロン(CORT)溶液またはその溶媒を自由飲水で4週間投与し、3DマイクロX線CTで全身撮影後、副腎・腓腹筋・後腹膜脂肪・肝重量、血糖値、血漿インスリン濃度を測定した。腰部の内臓脂肪・皮下脂肪量は、CT画像の各断面で脂肪面積を求め、第1腰椎から第6腰椎まで積算することによって算出した。全身の脂肪分布を検討するにあたり、頭部から尾部までを頸椎・胸椎レベル、腰椎レベル、仙椎から体幹部末端に分け、それぞれを4分割して各断面で脂肪面積を求めた。【結果】CORT投与による筋重量減少はWTにのみ認められた。CORT投与後、WTでは高血糖、高インスリン血症、後腹膜脂肪量増加、脂肪肝が認められたが、これらの変化はGRmKOでは軽微であった。CT解析では、WTではCORT投与で内臓脂肪は腰部優位に、皮下脂肪は頸部・胸部優位に増加していたが、これらの変化はGRmKOでは軽度であった。CORT投与後の代謝変化相互の間には相関関係が認められたが、GRmKOではそのほとんどが消失した。【考察】クッシング症候群において、骨格筋GRは、クッシング徴候、耐糖能の悪化、脂肪組織・肝臓への脂質蓄積亢進、に関与することが示唆された。2)FGF21ノックアウトマウスとGRmKOを交配させたFGF21/GRダブルノックアウトマウスを作出して解析した結果、グルココルチコイドを起点とした骨格筋-肝臓-脂肪組織連関を介したエネルギーフロー制御経路はFGF21依存性と非依存性に大別可能なことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
グルココルチコイドによる骨格筋-肝臓-脂肪組織連関を介したエネルギーフロー制御を探求する中で、これまで、飢餓時などにおいて骨格筋由来のアラニンー肝臓FGF21経路以外の経路が関与することを明らかにしていた。今年度の研究により、かかる連関にFGF21以外の因子が関与していることも明らかとなり、グルココルチコイドによる骨格筋-肝臓-脂肪組織連関を介したエネルギーフロー制御が極めて複雑かつ精緻に制御されている実態が解明されつつある。グルココルチコイドによる骨格筋の内分泌ー代謝ー運動連関に関しても、オミクス解析が順調に進捗し、グルココルチコイド-グルココルチコイドレセプター(GR)軸という内分泌シグナル系、タンパク質~エネルギー代謝、そして、運動、という複数の生体調節系がクロストークする分子機構とその生理的意義解明が進行している。なお、GRとPGC-1の相互作用解析、FGF21プロモーター解析は順調に進捗している。特に後者は、FGF21プロモータールシフェラーゼ遺伝子を組み込んだアデノウイルスを用いた生体観察系を確立し、変異プロモーターを用いた肝臓のアラニン感知以降のプロセスの解析が進行している。現時点で、アラニンの低下は、GCN2->ATF4->FGF21のシグナル経路を駆動することがわかっている。以上から、研究の進捗は概ね予想通りかそれ以上であると言える。
1)グルココルチコイドによる骨格筋内分泌ー代謝ー運動連関:骨格筋において、resistance exerciseによる筋肥大のカギ因子PGC1αに焦点を当て、骨格筋代謝・機能制御におけるGCの作用機構と生理的な意義をGRーPGC1α相互作用を介した遺伝子発現制御機構を基軸に究明する。また、全身エネルギー代謝制御のresistance exerciseによる変容において、骨格筋-肝臓-脂肪組織間シグナル軸が果たす役割を明らかにする 。具体的には、 運動による骨格筋PGC1α発現がGRによる転写を介したタンパク質分解系に及ぼす影響、骨格筋GRによるPGC1αアイソフォームPGC1α4の選択的発現に及ぼす影響の解析、運動による筋タンパク質分解抑制が肝臓、脂肪組織の代謝に及ぼす影響の解析、を実施する予定である。2)グルココルチコイドによる骨格筋-肝臓-脂肪組織連関を介したエネルギーフロー制御:骨格筋タンパク質分解由来のアラニンが肝臓においてFGF21産生に影響を与え、脂肪からのエネルギー動員を規定することから、骨格筋からのアラニン放出機構、肝臓のアラニンセンシングからFGF21産生に至る過程をさらに解明する。具体的には、骨格筋から血中へのアラニン放出を制御する分子機構、血中アラニン濃度の肝臓におけるセンシング機構を、すでに確立したFGF21プロモータールシフェラーゼ遺伝子を組み込んだアデノウイルスを用いた生体観察系を中心に明らかにしていく。また、今年度に明らかとなったFGF21非依存性の経路に関しても、オミクス解析を駆使して新たな関連因子の発見を目指す。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
Nucleic Acid Res
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Exp Cell Res.
巻: 360 ページ: 24-26
10.1016/j.yexcr.2017.03.049
Sci Rep
巻: 7 ページ: 8097
10.1038/s41598-017-08232-2
巻: 7 ページ: 46037
10.1038/srep39752
巻: 7 ページ: 39752
Modern Rheumatology Case Reports
巻: 1 ページ: 15-19
10.1080/24725625.2016.1266729
Mod Rheumatol.
巻: 27 ページ: 508-517
10.1080/14397595.2016.1213480