研究課題
【目的】先天性下垂体形成不全は小児下垂体機能低下症の中で比較的頻度の高い疾患であり、これまでその原因として下垂体関連転写因子の遺伝子変異が報告されているが、未だ80-90%の原因は不明である。本プロジェクトでは、エクソーム解析と疾患特異的iPS細胞を用いたin vitroモデルの病態解析により先天性下垂体形成不全の原因および病態解明を目指して研究を行った。【方法】ヒトiPS細胞からの下垂体分化プロトコールの確立、先天性下垂体低形成症例から疾患特異的iPS細胞の樹立と樹立した疾患特異的iPS細胞in vitro分化異常の有無と臨床的表現型の関連についての解析およびその機序の詳細について解析を行った。さらに原因不明の先天性下垂体前葉、後葉機能低下症例におけるエクソーム解析による責任遺伝子の同定とその発症機序の解析を行った。【結果】原因不明の先天性下垂体前葉、後葉機能低下症例由来の疾患iPS細胞の解析によって、下垂体前葉細胞in vitro分化能が著しく障害されていることが明らかになった。エクソーム解析によって視床下部下垂体に発現する転写因子OTX2遺伝子異常を同定した。さらに疾患iPS細胞のin vitro下垂体分化モデルを用いた解析から、OTX2は下垂体発生過程において、視床下部の増殖因子Yのシグナルを調節し、口腔外胚葉の転写因子Xの発現を上昇させることで下垂体発生を促すことが明らかとなった。今回の我々の検討からOTX2異常症が下垂体前葉だけではなく後葉形成不全もきたしうること、視床下部におけるOTX2が視床下部における増殖因子を介して下垂体分化に必須の転写因子発現を調節し分化を促進するという新たな機序を明らかにした。さらに本研究において、疾患特異的iPS細胞を下垂体疾患の病態解明に世界で初めて応用し、非常に有用な手法であることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
本プロジェクトの主な目的である先天性下垂体形成不全の疾患特異的iPS細胞を用いたin vitro disease modelingおよびその原因、発症機序の解明のめどが立ったことから順調に進展していると考えられる。
今後は発症機序のさらなる詳細な解明とともに、別の症例(LHX4, GLI2異常症)の解析を進め、本手法を後天性下垂体疾患を含む様々な下垂体疾患の病態解明にも応用を試みる予定である。本科研費期間中には現在の症例解析結果を論文化することを目標としている。
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