研究課題/領域番号 |
16H05337
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横山 明彦 京都大学, 医学研究科, 研究員 (10506710)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 白血病 / 分子病態 / 治療法 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、MLL白血病発症の分子基盤を明らかにすることで新たな分子標的を見出すとともに、これまでに開発されている分子標的薬の効果的な使用法を検討し、エビデンスを示しながら新たな治療法を提案することを目指す。我々は今年度までにMLL-ENLとMLL-AF10というがん遺伝子産物が白血病を引き起こす上でAF4とDOT1Lという二つの異なる転写活性を持つ因子を介していることを明らかにした。この二つの活性を同時に阻害するために、近年開発されつつあるMLL複合体形成阻害剤やDOT1L酵素活性阻害剤を併用すると強い抗がん活性を発揮することを実験的に示し、将来的にこの2剤の併用療法が有効な治療法となる可能性を持つことを明らかにした。具体的には、MLL-ENLがENL部分のAHDという構造を介して、AF4とDOT1Lを両方ともリクルートしており、どちらか一方の活性をリクルートするだけでは白血病を引き起こせないことを示した。一方、MLL-AF10はAF10の構造を介してDOT1Lをリクルートし、MLL中のTRX2ドメインを介してAF4をリクルートすることで二つの活性を効率的に標的遺伝子上に導いていた。白血病を起こすためにはAF4をリクルートする構造とDOT1Lをリクルートする構造の二つが必要であることから、2者の活性ががん化に必須であることがわかった。Ex vivoでMLL-ENL白血病細胞にMLL複合体形成阻害剤やDOT1L酵素活性阻害剤を同時に投与すると、単剤ではあまり効果のない濃度でも、効率的に白血病幹細胞を減少させることができることを明らかにした。今後、in vivoでこの2剤を投与することで白血病細胞を根絶させることができれば新たな治療法の確立につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で、(1)MLLキメラが局在するクロマチン環境の可視化、(2)MLLキメラが造血細胞を不死化する分子基盤の解明、(3)MLL白血病細胞を効率的に根絶させる分子標的薬間の協調作用の探索、(4)in vivo白血病モデルにてMLL白血病を治癒させる投薬法の開発の目標を掲げた。MLL-ENLについて(1)は達成できた。MLL-ENLとMLL-AF10に関しては(2)はほとんど達成できた。今後他のMLL fusionにおいて類似のことが言えるかどうかを検討して行く必要がある。(3)については、MLL複合体形成阻害剤やDOT1L酵素活性阻害剤の併用療法の有効性を実験的に示すことを達成できた。今後、他の組み合わせを模索して行く必要がある。(4)はまだ達成できていない。今後の検討課題である。研究は概ね順調に進捗しており、掲げていた目標の多くを達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はMLL-ENLやMLL-AF10以外のMLL fusionが造血細胞を不死化する分子基盤の解明を試みて行く。特にMLL-AF4やMLL-ELLは患者数も多いので今後のさらなる研究が必要である。同様の方法論を用いるので特に問題なく進めることができると予想される。MLL白血病細胞を効率的に根絶させる分子標的薬間の協調作用の探索について様々な薬の組み合わせを検討して行く。in vivo白血病モデルにてMLL白血病を治癒させる投薬法の開発が最も困難であるが、継続して取り組んで行く。近年、薬物動態の優れた化合物の開発が進んでおり、それらを使うことで良い投薬法を見出していきたい。
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