研究課題
本研究は、MLL白血病発症の分子基盤を明らかにすることで新たな分子標的を見出すとともに、これまでに開発されている分子標的薬の効果的な使用法を検討し、エビデンスを示しながら新たな治療法を提案することを目指す。我々はこれまでにMLL-ENLというがん遺伝子産物が白血病を引き起こす上でAF4とDOT1Lという二つの異なる転写活性を持つ因子を介していることを明らかにした。AF4はMLL-ENLによって標的遺伝子上にリクルートされ、転写の開始段階を促進する。一方でDOT1Lは転写可能なクロマチン構造の維持に働く。本研究で我々は、この二つの転写制御因子による協調作用がMLL-ENLによる白血病化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。MLL-ENLは標的遺伝子に結合するためにはMENINというタンパク質と結合する必要がある。従ってAF4の活性を阻害するために、MENIN-MLL結合阻害剤が利用できる。また、DOT1Lの活性は近年開発されたDOT1Lヒストンメチル化酵素阻害剤を用いて阻害することができる。このような分子基盤の理解から、AF4の活性とDOT1Lの活性を同時に阻害すると高い抗腫瘍効果が得られると考えられた。実際我々は、MLL複合体形成阻害剤やDOT1L酵素活性阻害剤を併用すると強い抗がん活性を発揮することを実験的に示し、将来的にこの2剤の併用療法が有効な治療法となる可能性を持つことを明らかにすることに成功した。今年度は様々な他のコンビネーションも試したが、上述の2剤が最も良いことがわかった。また、今年度はMLL-ENL以外の白血病がん遺伝子についてもこの2剤の効果を調べ、いくつかの白血病においても有効であることを見出した。この本研究で得られた知見から、白血病化に必須な転写制御因子が示され、それらの阻害剤が白血病治療薬になることを示す分子基盤が明らかとなった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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