研究課題
急速進行性難治性の間質性肺病変(ILD)を合併する皮膚筋炎(DM)・無筋症性皮膚筋炎(CADM)で見出される抗MDA5抗体の病因的意義と病態形成における役割を追究し、同疾患の生命予後改善を図るために、本年度は以下の研究を遂行し成果を得た。1.抗MDA5抗体の病原性の検討: SKGマウスにb-グルカンを投与して間質性肺炎を発症させ、ここに抗MDA5陽性患者IgGを投与したが、対照との間に有意な組織学的所見の差は認められなかった。2.抗MDA5抗体と関連する新規自己抗体が認識する対応抗原の同定: 抗MDA5抗体と併存する新規抗110kDa蛋白抗体の対応抗原がSFPQ(splicing factor proline/glutamine-rich)蛋白であることを突き止めた。興味深いことに抗SFPQ抗体は常に抗MDA5抗体と併存し、半数は疾患診断時に陰性でも経過中に陽性となり、さらに抗体の出現様式と疾患の発症時期の間に季節性があることが見出された。MDA5とSFPQはRNAウイルスの防御機構に関与することが報告されており、自己抗体とウイルス感染などの環境因子が関連する可能性が示唆された。3.抗MDA5抗体陽性患者の生命予後改善をめざす多施設共同研究: 進行性ILD合併抗MDA5抗体陽性DM/CADM患者を対象とし、ステロイド大量、タクロリムス、シクロホスファミド間歇静注療法を同時に開始する前向き臨床研究を遂行中である。既に21例を登録し、これまで主要エンドポイントである6カ月生存率87.5%の成績を得ている。また抗MDA5抗体の病原性を想定し、難治症例に対する血漿交換療法の効果を検討する臨床研究を追加した。前記3剤併用療法開始患者を対象とし、12週目までに肺病変の増悪が認められる場合に、週1回の単純血漿交換療法を計10回行い、状況により増減した。これまでに7例を登録している。
2: おおむね順調に進展している
抗MDA5抗体に併存する新規自己抗体の対応抗原をSFPQと同定できたことは大きな進歩といえる。一方で、患者抗MDA5抗体IgGによるマウスILDモデル(SKGマウス)におよぼす病理学的変化は確認できなかった。また、抗MDA5抗体陽性難治性間質性肺病変に対する強力免疫抑制療法と血漿交換療法の有用性を検証する多施設共同臨床研究については、順調に患者の登録が行われているものと考える。
今後の研究において、新規抗SFPQ抗体の陽性化に関わる臨床的イベント、特に感染症との関連を後向きおよび前向き調査によって検討し、自己抗体産生に関与する因子および自己抗体自身の病原性を究明する。マウスモデルを用いた抗MDA5抗体の病原性については、抗体接種条件を変えてさらに検討する。また、多施設臨床研究については、研究協力施設に呼び掛けてさらに患者リクルートを増やして計30例の登録と解析を目指す。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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