研究課題/領域番号 |
16H05348
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木戸 博 徳島大学, 先端酵素学研究所(デザイン), 特任教授 (50144978)
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研究分担者 |
高橋 悦久 徳島大学, 先端酵素学研究所(デザイン), 特任助教 (10380065)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感染症 / インフルエンザ / 重症化 / 代謝破綻 / サイトカインストーム / 治療薬 / トリプシン |
研究実績の概要 |
これまでの研究から、インフルエンザウイルスの気道感染時に増加が認められるサイトカインのTNF-alpha、IL-6、IL-1beta、IL-2,IFN-alpha,IFN-beta、IFN-ganmer、IL-12の相互作用、フードバック調節機構を確認した。さらに我々は、インフルエンザ感染における各サイトカインの重み付けを行い、司令塔に当たるサイトカインを検索した。その結果、IL-1betaが、これらのサイトカインの司令塔となっていることを、抗体による中和、RNAiによる発現抑制で証明することができた。しかし、IL-1beta以外の各種サイトカインもIL-1betaとの相乗的効果として影響を与えていることが確認することができた。以上の結果は、IL-1betaの発現抑制、抗体による中和によって、インフルエンザ感染が引き起こす各種代謝破綻を伴う重症化を抑制することを示唆した。特に、インフルエンザ感染の重症化に関与するインフルエンザーサイトカインーtrypsin サイクルが、IL-1betaの発現抑制、中和によってサイクルの回転が阻止でき、trypsinとウイルス発現を抑制できたことは、今後の治療薬開発の基盤になると推定している。 一方、これまでの研究から、サイトカインストームによって生じた糖代謝と脂肪酸代謝破綻は、PDK4阻害剤で抑制されることを見出してきた。本年度の研究では、これまでに報告してきたPDK4阻害剤のDADAよりも、阻害効果がさらに20倍以上強力な新規化合物がスクリーニングから見いだされ、今後の研究が期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、1)インフルエンザ感染におけるサイトカインカスケードの司令塔検索と治療標的の同定、2)サイトカインストームによって生じた糖代謝と脂肪酸代謝破綻が導く多臓器不全のメタボローム解析による治療標的酵素の同定と治療薬の検証、3)インフルエンザーサイトカインーtrypsinサイクルが誘発するPAR1/2を介した急性浮腫の治療薬検討の3本の柱を設定して、研究を進めてきた。平成28年度の研究では、研究の中心を構成する1)の研究課題を明確にすることができて、今後IL-1betaの発現抑制、中和によって重症化の増悪サイクルの回転を阻止する主要な経路が明らかになったと考えている。また、2)の研究課題も、PDK4阻害剤として従来のDADAに比べてさらに20倍以上強力な新規化合物が同定されたことは、大きな研究成果と考えている。3)のPAR1/2を介した急性浮腫の治療薬検討については、現在進行中であり、引き続き検討を続けて行く。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は無い。今後も、1)インフルエンザ感染におけるサイトカインカスケードの司令塔検索と治療標的の同定、2)サイトカインストームによって生じた糖代謝と脂肪酸代謝破綻が導く多臓器不全のメタボローム解析による治療標的酵素の同定と治療薬の検証、3)インフルエンザーサイトカインーtrypsinサイクルが誘発するPAR1/2を介した急性浮腫の治療薬検討の3本の柱を中心に、研究を進めて行く。今後に繋がるサイトカインカスケードの司令塔としてのIL-1betaの同定、糖代謝と脂肪酸代謝破綻に有効な強力なPDK4阻害剤がスクリーニングされたことから、今後の研究成果が期待される。
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