研究課題
肺炎球菌は日本人の死因第三位の肺炎、髄膜炎や敗血症の主な起炎細菌である。そのため、肺炎球菌感染に対する防御免疫機構に基づく有効性の高いワクチン開発が重要である。我々は、リンパ球のnatural killer T(NKT)細胞を介した新しい肺炎球菌感染防御機構を明らかにし、その知見を活かして新規肺炎球菌蛋白・糖脂質ワクチンの感染防御効果を見出した。本研究では、新規肺炎球菌ワクチンの効果の持続性を評価すると共に、感染防御に重要な抗体産生誘導機構について解析を行った。通常、B細胞の高親和性IgG抗体産生誘導において、濾胞性ヘルパーT細胞というCD4T細胞が重要な役割を担う。しかし本研究にて、肺炎球菌蛋白・糖脂質ワクチン投与により、濾胞性ヘルパーT細胞に特徴的なCXCR5及びPD-1分子を発現した、濾胞性ヘルパーNKT細胞が誘導されることが分かった。また経時的解析にて、免疫後早期から濾胞性ヘルパーNKT細胞が検出され、その後、抗原特異的胚中心B細胞が誘導されることが明らかになった。一方で、本ワクチン投与ではリンパ節での濾胞性ヘルパーT細胞の明らかな増加を認めなかった。本ワクチンでは濾胞性ヘルパーNKT細胞が胚中心B細胞の誘導及びIgG抗体産生の誘導に重要な役割を担うことが示唆された。また、肺炎球菌蛋白・糖脂質ワクチン投与の数ヶ月後においても、血中抗原特異的IgG抗体価が高値を示し、肺炎球菌感染防御効果が持続することが分かった。さらに、本ワクチン投与により、感染防御効果の持続性に重要な役割を担う長期生存型形質細胞が誘導されることを示唆する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに解析が進んでいる。
本研究にて、肺炎球菌蛋白・糖脂質ワクチン効果の誘導において、濾胞性ヘルパーNKT細胞が重要な役割を担うことが示唆された。濾胞性ヘルパーNKT細胞の特徴を明らかにするために詳細な解析を行い、この細胞による胚中心B細胞の誘導機構の解明を目指して研究を推進させる。また、本ワクチンの投与にて長期生存型形質細胞が誘導されることを示唆する結果を得たため、詳細な解析を行うと共に、記憶B細胞の誘導についても解析を行う。本研究にて新規肺炎球菌ワクチンによる感染防御機構の学術的基盤を確立し、肺炎球菌ワクチン開発の推進に繋げる。
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Methods Mol Biol
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