研究課題/領域番号 |
16H05350
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 ちぐさ 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50510054)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アレルギー疾患 / CD300a / 常在菌 / ケラチノサイト / エクソソーム |
研究実績の概要 |
小児アレルギー疾患の免疫応答の場である皮膚、気道、腸管には常在菌が存在し、制御性T細胞(Regulatory T cells; Treg) の分化誘導を促して疾患予防、軽症化に寄与する。それとは逆に、我々は、常在菌が上皮細胞のアポトーシスを誘導し、インターフェロンβの産生抑制を介してTregを減少させる経路の存在を見いだした。さらに、この経路はアポトーシス細胞上のフォスファチジルセリン (PS)と、樹状細胞上のCD300a受容体の結合により起きる事を明らかにした。本研究では、小児アレルギー疾患を増悪、軽快させる樹状細胞(CD300a)-Tregの抑制/促進のバランスに関わる分子機構を明らかにし、また、常在菌の違いによる疾患への影響を解明することを目的としている。 まずアトピー性皮膚炎に焦点を絞って解析を行った。アトピー性皮膚炎モデルでは、常在菌によって刺激を受けた皮膚から、エクソソームが分泌されていることを見いだした。エクソソームは、刺激を受け活性化した細胞や、がん細胞から多く分泌される小型膜小胞であるが、CD300aのリガンドであるPSを常時発現していることが判明している。樹状細胞をエクソソームのみで刺激すると、思いもよらなかったことに、CD300a遺伝子欠損由来の樹状細胞からはインターフェロンβが大量に産生されることを見いだした。さらに、このインターフェロンβの産生は、常在菌によって刺激を受けたケラチノサイトからのエクソソームによる刺激では認められるが、ケラチノサイトの培養上清中のエクソソームでは認められなかった。一方で、常在菌のケラチノサイトへの影響を調べたところ、常在菌由来の分子がケラチノサイトの分化を促進していることを見いだしたため、カラム分離法、質量分析法によってこの分子の同定を試みた。その結果、ある種の細菌特異的に発現するタンパク質であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予期していなかった結果をいくつも得たが、平成29年度は特に、これまで世界でも明らかにされていない、ケラチノサイトの分化を促進する常在菌由来のタンパク質の同定に成功した。今後、この結果をアレルギー疾患と結びつけて、アレルギー疾患の新たなメカニズムを明らかとしていく予定であるため、当初の予定とは異なるものの、本研究の進捗としては、概ね順調だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、常在菌から新たに同定したタンパク質が直接ケラチノサイトを分化させ得るのかの検証を行っている。 同時に、このタンパク質を発現する常在菌、およびこのタンパク質を変異させた菌によるエクソソーム分泌の測定を試みている。また、この菌を野生型、及びCD300a遺伝子欠損マウスの無菌マウス(既に樹立済み)に投与することによって、制御性T細胞数を解析し、アトピー性皮膚炎の病態に関与しているのかを明らかにしていく。
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