小児アレルギー疾患の免疫応答の場である皮膚、気道、腸管には常在菌が存在する。一方で我々は、常在菌が上皮細胞のアポトーシスを誘導し、インターフェロンβの産生抑制を介してTregを減少させる経路の存在を見いだし、この経路がアポトーシス細胞上のフォスファチジルセリン (PS)と、樹状細胞上のCD300a受容体の結合により起きる事を明らかにした。本研究では、この樹状細胞(CD300a-PS)- インターフェロンβ- Tregの抑制/促進のバランスに関わる分子機構を明らかにし、常在菌の違いによるアレルギー疾患への影響を解明することを目的とした。エクソソームは、細胞から分泌される小型膜小胞であるが、CD300aのリガンドであるPSを常時発現していることが判明している。マウスアトピー性皮膚炎モデルを作製し、皮膚エクソソームの分泌を解析したところ、アレルゲンのみならず常在菌によって刺激を受けた皮膚から、エクソソームが分泌されていた。樹状細胞をエクソソームで刺激すると、CD300a遺伝子欠損由来の樹状細胞からはインターフェロンβが大量に産生されるが、このインターフェロンβの産生は、思いもよらなかったことに、常在菌によって刺激を受けたケラチノサイトからのエクソソームによる刺激では認められるが、ケラチノサイトを培養したのみの上清中エクソソームによる刺激では認められなかった。したがって、アレルゲンのみではなく、常在菌がケラチノサイトを刺激することによるエクソソームの分泌が、アトピー性皮膚炎の制御に関与している可能性が示唆された。一方で本研究過程において、常在菌由来の分子が皮膚ケラチノサイトの分化、増殖を促進していることを見いだしたため、この常在菌の同定を試みた。その結果、sporeを形成する嫌気性グラム陽性菌であることが明らかになり、現在単離を試みている。
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