研究課題/領域番号 |
16H05352
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
斎藤 潤 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (90535486)
|
研究分担者 |
吉田 路子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70754571)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 神経筋接合部 / 多能性幹細胞 |
研究実績の概要 |
神経筋接合部(Neuromuscular junction:NMJ) は運動神経終末と筋肉の接合部であり、シナプスが形成されている。NMJでは神経終末からアセチルコリンが放出され、筋収縮が引き起こされる。NMJ構成分子の異常は様々な疾患を引き起こすが、ヒトにおける解析手法はin vivoの電気生理学的解析や病理学的解析に限られている。ヒトNMJ(hNMJ)の細胞生物学的な機能解析のためには、in vitroでNMJを構築させる系が必要である。申請者らは、ヒト多能性幹細胞を運動ニューロンへ分化誘導した後に、マウス筋細胞株と共培養することにより、in vitroでNMJを形成させることに成功した。しかし、ヒトNMJ疾患の病院には、神経側・神経側それぞれの要因があり、病態生理が不明のものや、孤発例で原因そのものが不明のものもある。これらの疾患の詳細な病態解析のためには、ヒト-マウスのハイブリッド系でなく、ヒト運動ニューロンとヒト骨格筋細胞からhNMJを構築する必要がある。そこで、本提案では、ヒト多能性幹細胞より機能的なhNMJを構築し、これを疾患解析・創薬へ応用することを目的とする。 平成28年度は、ヒトiPS細胞由来運動ニューロンと骨格筋細胞を組み合わせて、hNMJを構築する系を確立することに成功した。複数のiPS細胞クローンから同様の検討を行い、構築系のrobustnessを検証した。hNMJ形成はαBTXによるアセチルコリン受容体(AChR)クラスタリングの染色によって評価し、必要に応じてAChRの免疫染色を併用した。また、NMJの成熟状態の評価として、透過電顕による微細構造の評価を実施した。筋収縮の程度について,企業との共同企業でリアルタイム評価可能な系を構築し、評価を行った。脊髄性筋萎縮症モデルについて、原因遺伝子であるSMNのノックダウンiPS細胞を作製し、これをNMJに分化させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記載の平成28年度計画をほぼ計画通り実行することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進んでいるため、研究計画を継続する。 ①ヒト多能性幹細胞の機能的なhNMJ構築と評価 前年度の計画を継続する。現在は骨格筋細胞と神経細胞が同一のiPS細胞クローンに由来するため、異なるクローンからNMJを作製する系の構築も検討する。安定した構築系が構築されれば、培養期間とNMJの成熟との関係を、形態・機能から明らかにし、in vitroとin vivoの分化段階を対照させ、in vitroでの分化段階毎の遺伝子発現プロファイルやエピジェネティックな変化を解析する。 ②hNMJを用いた疾患モデリングと病態解析 前年に引き続いて解析を行う。SMNノックダウンiPS細胞と正常iPS細胞の神経、筋肉、NMJの形態、機能を比較する。異なるクローンからNMJを形成する系が構築されれば、SMN発現パターンの組み合わせを変えて筋肉と神経を作製し、それらよりhNMJを構築させる。神経、筋肉それぞれが異常な場合のNMJ形成能や機能を解析し、NMJ病としてのSMAの病態生理を明らかにする。先天性筋無力症候群についても疾患モデルの構築を進める。
|