研究課題
福山型筋ジストロフィー、muscle-eye-brain病、Walker-Warburg症候群を代表とするα-ジストログリカノパチーは、先天性の筋ジストロフィー、II型滑脳症、眼奇形を示す。本疾患群はα-dystroglycan上のO-mannose型糖鎖からリン酸基を介して伸びる側鎖の欠如が主原因であると考えられている。本研究では、その側鎖の完全構造決定と生合成分子機構の解明、その異常による脳の神経細胞移動異常に加え神経機能障害としての病態解析を行うこと、さらに、脳を中心とした治療実験も行い、臨床応用可能な治療法開発を目指すことを目的としている。本年度は以下の実験を行ってきた。1.α-DG機能糖鎖の完全構造決定と生合成機構の解明:α-DG機能糖鎖の未知構造部分の解析として、α-DGサンプルの調製と、質量分析を用いた未知構造部分の構成成分の決定、NMRを用いたその構成成分の結合様式の決定を行い、さらに、細胞や組織の内在性α-DGを用いた構造の確認を行って、矛盾がないかを検討した。これまでに哺乳類では報告されたことのない、新たな糖鎖構造を見出した。2.O-Man型糖鎖の脳における意義の解明:fukutinの中枢神経における機能解析として、FCMDモデルマウスからiPS細胞の作製、iPS細胞から分化させた神経細胞、グリア細胞の性質の解析を行った。現在のところ目立った異常は確認されていないが、継続して観察する必要がある。FCMDモデルマウスを用いた行動解析とLTPの解析として、モデルマウスの行動解析による神経機能障害への関連の検索、モデルマウスのLTPの解析を行った。双方とも、有意な異常は確認できなかった。
3: やや遅れている
細胞培養上清からα-DGサンプルの調製と構造解析を行う中で、サンプルの精製量が予備実験による想定回収量の半分以下しか確保できないことが判明し、研究にやや遅れが出た。限られたマンパワーと培養スペースで必要量を確保するには、作業の効率化を図る必要があり、大量細胞培養の方法を再検討し、適切な大量培養器具類を使用することでこの問題が解決することを確認してからは、順調に進展している。
本年度で得られた結果に基づき、今後も継続して解析を行い、研究計画通り、機能未知のα-DGpathy原因遺伝子産物fukutin、FKRP、TMEM5、ISPDの機能解析を行うことでα-DG機能糖鎖の生合成機構を解明し、一方で、アンチセンス核酸とAAVベクターの脳内投与を行うことによって、FCMDモデルマウスを用いた脳の治療を検討する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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