研究課題/領域番号 |
16H05353
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小林 千浩 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90324780)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 筋ジストロフィー / 脳神経疾患 / 酵素 / 遺伝子 / ジストログリカノパチー / fukutin / α-dystroglycan |
研究実績の概要 |
福山型筋ジストロフィー、muscle-eye-brain病、Walker-Warburg症候群を代表とするα-ジストログリカノパチーは、先天性の筋ジストロフィー、II型滑脳症、眼奇形を示す。本疾患群はα-dystroglycan上のO-mannose型糖鎖からリン酸基を介して伸びる側鎖の欠如が主原因であると考えられている。本研究では、その側鎖の完全構造決定と生合成分子機構の解明、その異常による脳の神経細胞移動異常に加え神経機能障害としての病態解析を行うこと、さらに、脳を中心とした治療実験も行い、臨床応用可能な治療法開発を目指すことを目的としている。 本年度は以下の実験を行ってきた。 1.α-DG機能糖鎖の完全構造決定と生合成機構の解明:α-DG機能糖鎖の生合成機構の解明として、α-DGpathy原因遺伝子産物fukutin、FKRP、TMEM5、ISPDの機能解析を行った。ISPDのドナー基質合成酵素活性と、fukutin、FKRP、TMEM5の転移酵素活性をHPLCと質量分析により測定することに成功した。α-DG安定強発現細胞株において各遺伝子をゲノム編集によりノックアウトしα-DGを精製し質量分析を行い、各酵素活性が失われていることを確認した。低分子のアクセプター基質を用いて出来上がった産物から、NMRにより結合様式を決定した。 2.O-Man型糖鎖の脳における意義の解明:前年度からiPS細胞から分化させた神経細胞、グリア細胞の性質の解析を行っている。 3.α-DGpathyに対する治療法の模索:FCMDモデルマウスを用いた脳の治療の検討として、アンチセンス核酸の脳内投与を試みた。患者変異fukutinノックインマウス、脳のα-DG糖鎖修飾の回復が生化学的に観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中枢神経特異的fukutinノックアウトマウスにfukutin遺伝子を組み込んだAAVベクターを脳室内、あるいは脳実質内投与する研究計画で、AAVベクターの作成に時間がかかっているが、目途が立ち、全体的におおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果に基づき、今後も継続して解析を行い、研究計画通り、糖鎖生合成に関わる可能性のある未同定の遺伝子の検索とα-DGpathyとの関連について解析し、α-DG機能糖鎖の生合成機構の詳細な解明を行う。一方で、新たなO-Man型糖鎖修飾標的タンパク質とα-DGリガンドの同定を行う。
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