研究課題
1.(1)2017年7月-2018年6月でみると457糞便検体中ノロウイルスGIIが最も多く(37%)、ロタウイルスがそれに続いた(22%)。ヒトパレコウイルス(12%)、エンテロウイルス(11%)、アデノウイルス(9%)、アストロウイルス(6%)、サポウイルス〈5%〉も見いだされた。ロタウイルスワクチンの導入初期に一時ロタウイルス感染症が減少したが、その後少し上昇した。(2)ロタウイルスは2000年頃まではG1が最も多く検出されたが、その後G3、再度G1、そしてこの数年では毎年流行遺伝子型は変化した。2017年は主に静岡でG8P[8]が、2018年は主に京都でG9P[8]が最も多く検出された。地域によってはロタウイルス胃腸炎の流行がみられ、さらに特異的な遺伝子型であった。(3)流行したG8のロタウイルスは 次世代シークエンス法を用いるとG8-P[8]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2で、2013-14年ごろにタイやベトナムで検出されたG8-P[8]と99%以上一致した。但し、VP1(R)は他の型とのリアソータントと考えられた。2.ロタウイルスワクチンは導入期であるが、約70%の新生児が接種を受けていた。G8P[8]の流行株のみならず、G9P[8]の流行株およびすべてのロタウイルス株でも、遺伝子増幅法やイムノクロマト法での判定でワクチンの効果を認めた。即ち重症化を防ぐことがTest Negative Case Control Study で示された。 3. ロタウイルス(Odelia株)、ノロウイルス(GII.4株)の混合皮下接種で各々の特異IgG,IgM,IgA抗体の上昇を見た。2回接種で糞便中に僅かながら特異IgAの上昇を見た。その他に、ロタウイルス胃腸炎ではウイルスの便中排泄量が多いが、血清中にも抗原血症を認めた。
1: 当初の計画以上に進展している
1.胃腸炎ウイルスの分子疫学については、毎年全国6か所の小児科クリニックから400~500検体について10種以上のウイルスの検出を行った。年によっては不顕性感染や重感染にも及んだ。ノロウイルスは依然としてGII.4が主であるがロタウイルスに関してはワクチン接種が多くなったにもかかわらず地域によってはロタウイルス感染症が比較的高い年齢層に見られた。 2.ロタウイルスワクチンの有効性に関しては、ワクチンに含まれない型にも有効であることが示された。ただ、重症化は防げるがロタウイルス感染そのものは抑えられなかった。3.ロタウイルスとノロウイルスの混合ワクチンのマウスでの皮下接種では、想定した結果を得た。即ち細胞性免疫、液体抗体の上昇を見た。不活化ワクチンは腸重積の副反応もなく、またノロウイルスとの混合ワクチンは有用と考えられる。現在、乳酸菌やバキュロウイルス系への組み込みワクチンの開発も行っている。4.ロタウイルスとノロウイルスを同時に検出できるイムノクロマト法の有用性、感度・精度を図ることが出来た。サポウイルスのICキットの開発には成功したが、サポウイルスに関してはGII.2に対するウイルス様粒子が作れずイムノクロマトキットの作製には至っていない。その他に、タイ、バングラデシュの研究者との下痢症ウイルスの分子疫学は、持続的に進んでいる。わが国とバングラデシュでは下水中の下痢症ウイルスの検出を行った。ノロウイルス、ロタウイルス、現在流行している型のウイルスを見た。ただノロウイルスGIは流行がないにも関わらず高頻度に認めた。タイでは、稀ではあるが新しいヒトと動物の組換えウイルスを見た。
1.最終年度は2018年7月から2019年6月までの全国6か所の小児科クリニックからの検体を得て、経年的な下痢症ウイルスのスクリーニングと、ロタウイルス、ノロウイルスに特化した遺伝子型、遺伝子変異を調べる。過去4年分の分子疫学をまとめその変動を知る。国内外の下痢症ウイルスの傾向と比較する。 論文あるいは発表でまとめる。ロタウイルスの流行が見られた場合、ワクチンの有効性についても再度調査する。ワクチン接種者の感染、重症度などワクチン未接種者と比較する。また、ワクチンの効果の持続性を見るために前年度から得られたワクチン接種者の血清中のロタウイルスの抗体価の変動を年齢ごとに見る。抗体の測定はEIA法を用いる。またワクチン未接種者の不顕性感染状態を抗体で見る。ロタウイルス感染者の血中抗原の推移を経日的に調べる。臨床像と比較する。2.昨年度ロタウイルスおよびノロウイルスワクチンの1期回皮下接種マウスに再度2期として接種し、2期接種前の抗体と接種後の抗体の上昇を見る。マウスレベルでの2種混合ワクチンを評価する。ワクチンに関しては他の研究費と含め、乳酸菌にノロウイルス抗原の発現とマウスへの投与、およびカイコにバキュロウイルス系を用いたノロウイルスの発現を行いマウスに投与する実験を行う。3.環境と流行疫学の立場から、過去20年のロタウイルス、ノロウイルスの発症日、気温、雨などのデータを入れ込んで解析を続ける。また下水中の胃腸炎ウイルスと患者便中のウイルスの相関、二枚貝中のウイルスと患者便中ウイルスを分子疫学的に調べる。特にロタウイルスワクチン株の環境中の存在を調べる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 図書 (2件) 備考 (2件)
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