研究課題
本研究では、髄鞘膜蛋白質PLP1のアミノ酸置換変異により中枢神経系の髄鞘形成不全を呈するPelizaeus-Merzbacher病(PMD)を引き起す新規の細胞病態機序を解明することを目的とする。従来言われてきた変異体PLP1蛋白質の病態はとして小胞体ストレスによって細胞に起こるunfolded protein response(UPR)の破綻による細胞死以外の細胞病態の介在が示唆されている。最近我々はUPRとは別に、変異体PLP1が他の正常な膜蛋白質や分泌蛋白質の輸送を障害する可能性を見出した。そこで、本研究では変異体PLP1がER-Golgi体輸送経路を障害することにより、細胞の恒常性維持に必要な蛋白質の輸送が障害されるという新たな病態モデルを提唱し、このモデルの検証とその細胞分子機序の解明を行う。本研究では、PMDの新規病態機序を明らかにするために、PLP1のアミノ酸置換変異体を用いて、HeLa細胞などの不死化細胞、マウスオリゴデンドロサイト(OLs)初代培養細胞、PMDモデルマウス、ヒトPMD患者由来iPS細胞を用いた細胞生物学的手法を用いた解析を実施する。本年度は変異体PLP1の分泌経路障害作用はどのような分子機序を介するのかについての検討を行った。その結果、ERからGolgi体への順方向の輸送経路において、ER exit siteにおける足場形成には異常はないものの、輸送体であるCOPII小胞の形成の障害が起こることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成28年11月、HeLa細胞を用いたER-Golgiの順方向輸送経路の検証に関する研究の過程で、当初の想定と異なり、変異体PLP1がCOPII小胞の形成に障害を来す可能性が示唆された。研究遂行上この現象を解明することは不可欠なため、ER-Golgiの順方向輸送経路に含まれるCOPII小胞に関連する解析において、新たな分子についての解析や新たな手法を用いた解析を追加して実施する必要性が生じたため、当初の計画を6ヶ月延長し、平成29年9月までの研究計画に変更した。研究は概ね順調に進展している。
ER-Golgiの順方向輸送経路の検証に関する研究の過程で、当初の想定と異なり、変異体PLP1がCOPII小胞の形成に障害を来す可能性が示唆された。これまでに変異体膜蛋白質が直接膜輸送を阻害する機序については、報告されていない。そこで今後は、変異体PLP1がCOPII小胞の形成を障害する分子機序を明らかにするとともに、これが本疾患の治療の標的となる病態であるのかを検討していく必要がある。
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