研究課題
我々は、マウス脳のIG-DMRにおいて5-メチル化シトシン(5mC)の脱メチル化中間代謝産物である5-ヒドロキシメチル化シトシン(5hmC)が特徴的な分布を示し、神経分化に重要な役割を果たす可能性があるというデータを得ている。IG-DMRの高メチル化異常を示す鏡-緒方症候群(KOS)症例において精神運動発達遅滞が必発であること、また脳に5hmCが大量に含まれていることから、KOSの特に神経組織における解析は重要であると考えられる。患者の脳サンプルに直接アクセスすることはできないことから、患者線維芽細胞からiPS細胞を樹立し、神経系に分化誘導する系を用いて解析を進めている。平成29年度は、KOS欠失症例4例、KOSエピ変異症例3例、KOSと鏡像関係を示すTemple症候群(TS)欠失症例1例よりiPS細胞を樹立し、神経幹細胞への分化誘導を大多数のiPS細胞で完了した。我々が開発した酸化バイサルファイト法、パイロシークエンスおよびDNAメチル化ビーズアレイを組み合わせて5hmCと5mCを区別する網羅的メチル化解析(Matsubara et al. Clin Epigenet 2015)を行い、5hmCの分布を解析したところ、全体的な傾向として、神経幹細胞では5hmCの含有量が非常に少ないことが判明した。細胞株間で計測値にばらつきが大きかったことから、株数を増やし、再度同様の解析を実施している途中である。また、胎盤にはインプリンティング遺伝子が強く発現していることが知られているが、罹患児の胎盤組織を入手できたため、これに関しても同様の解析を実施している。
3: やや遅れている
細胞株間の個体差やデータのばらつきが想定よりも大きく、細胞株数を増やす必要が生じたため。
iPS細胞を用いた実験系では、個体間および細胞株間でのデータのばらつきが大きいため、エントリー症例および細胞株を増やし、より大規模な解析を行う。また、一部の症例で胎盤を入手できたため、胎盤の解析も詳細に行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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