研究実績の概要 |
自閉性障害(ASD)は、社会性・言語やコミュニケーション能力の発達障害、および、限定されたあるいは反復した行動・興味・活動、を主たる症状とする発達障害である。申請者らはASD患者の遺伝子解析を行い、11種類の時計遺伝子(TIMELESS (TIM), NR1D1, PER1-3, CLOCK, BMAL1/2, MTNR1A/B, CSNK1E)にアミノ酸置換を伴うミスセンス変異を発見した。 本研究では、NR1D1, PER3,TIMELESSに関して、独自に構築した“発達障害関連分子のin vivo/in vitro解析バッテリー”を用いて、時計遺伝子群の生理機能/病態機能解析を遂行した。具体的には、in vivo実験として、①大脳皮質神経細胞移動、②軸索伸長、③樹状突起の発達、④細胞周期、⑤海馬歯状回顆粒細胞の形態解析、⑥マウス行動解析を行う。一方、in vitro解析として、⑦海馬神経細胞のシナプス形態解析、⑧生化学実験、⑨分子細胞生物学実験、⑩電気生理学的実験を行った。各項目の実験は共通の基本戦略に基づいて遂行した。すなわち、対象遺伝子のノックダウン(RNAi)とレスキュー実験を行うことで生理機能の解析を、また、発現を抑制した状態で変異遺伝子の強制発現(変異体レスキュー)を行うことで病態機能の解析を行った。 上記の解析の結果、NR1D1とPER3の遺伝子異常がASDなどの発達障害の病態を形成するメカニズムの一端を明らかにし、原著論文として報告した。
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