研究課題
自閉性障害は、社会性・言語やコミュニケーション能力の発達障害、限定されたあるいは反復した行動・興味・活動、を主たる症状とする発達障害である。申請者らはASD患者の遺伝子解析を行い、PER3とNR1D1を含む11種類の時計遺伝子にミスセンス変異を発見した。PER3に関して、独自に構築した“発達障害関連分子のin vivo/in vitro解析バッテリー”を用いて病態機能に関する解析を遂行した。具体的には、in vivo実験として、大脳皮質神経細胞移動、軸索伸長、樹状突起の発達、細胞周期、を行った。一方、in vitro解析として、海馬神経細胞のシナプス形態解析、生化学実験、分子細胞生物学実験 を行った。具体的な実験手法としては、PER3のノックダウン(RNAi)とレスキュー実験を行うことで生理機能の解析を、 また、発現を抑制した状態で変異遺伝子の強制発現(変異体レスキュー)を行うことで病態機能の解析を行った。 その結果、PER3の遺伝子異常が発達障害の病態形成に関与する可能性を明らかにし、原著論文として報告した。NR1D1は、DNA転写を調節する核内受容体である。概日リズムに関与し、遺伝子欠損マウスでは概日リズムに関与することが示唆されている。本研究では、自閉症で、知的障害と睡眠障害がある成人女性において、NR1D1に父性遺伝の変異を見出した。そこで、大脳皮質形成過程に対するNR1D1の機能を解析する目的として、子宮内胎仔脳遺伝子導入でNR1D1の発現を抑制した結果、大脳皮質形成の過程で神経細胞の移動が遅れた。これにRNAi抵抗型の野生型NR1D1を発現させると移動障害は回復したが、変異型NR1D1では回復しなかった。以上の結果から、自閉症様障害に関与するNR1D1は、大脳皮質形成過程の細胞移動において、重要な役割を持つ可能性があることを見いだし、論文報告した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件)
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