研究課題
母-胎児間leukemia inhibitory factor (母胎間LIF) シグナルリレーの,胎児大脳抑制性ニューロンの発生における役割について検討した。平成29年度までに,母体へのLIF投与後のマウス胎児大脳における網羅的遺伝子発現解析を行った。最終年度も引き続き,LIFシグナルリレーによる抑制性ニューロンの産生誘導メカニズムの解析を行った。その結果,培養液へのLIFの添加により,腹側大脳由来neurosphereにおいて,抑制性ニューロン産生誘導に重要な転写因子SOX2, Shhおよび Nkx2.1の発現亢進が確認された。培養系で認められたこれらの遺伝子群の反応を生体でも確認する目的で,妊娠13.5日齢C57BL/6Jマウス母獣にLIF (5μg/mL BW) を投与し,胎児腹側大脳における遺伝子発現を,定量的RT-PCRにて解析した。その結果,母体へのLIF投与により,胎児背側大脳においてSOX2およびNkx2.1の有意な発現亢進が確認された。Nkx2.1はガイダンス因子受容体であるNeuropilin-2の発現量を調節することで,介在ニューロンの移動に関与することが知られる。さらに,抑制性シナプス形成に関与するSlitrk3の発現亢進も認められた。これらの結果から,母胎間LIFシグナルリレーは,胎児大脳における抑制性ニューロンの産生および分化誘導に深く関与することが示唆された。母胎間LIFシグナルリレーの中間分子である副腎皮質刺激ホルモンの阻害を目的としたメラノコルチン5および2受容体ノックアウトマウスは,ホモ個体での維持が困難であり,実験に供することが出来なかった。また,全脳における抑制性ニューロンの網羅的画像解析については,ハイスループット画像取得システムの構築とそれに最適化した脳透明化プロトコルがおおむね完成したため,今後の発展が大いに期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Congenital Anomalies
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PLOS Genetics
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